イヴァン・モラヴェッツ。チェコに生まれた二十世紀を代表するピアニストの一人。スプラフォンにおさめられた協奏曲をあわせた一枚です。グリーグ、ラヴェルの協奏曲にプロコフィエフの第一協奏曲を組み合わせています。圧倒される演奏技術。難所も快速で進むものが多いのです。緩徐楽章での叙情にも優れたものがあります。ホルンの音色であったり、緩やかな楽章の管弦楽のパートもよく歌う。思わぬ効果にハッとさせられることがあります。グリーグはエルデーイ指揮プラハ交響楽団で84年の音源。ラヴェルはシモノフ指揮、プロコフィエフはアンチェル指揮です。ともにチェコ・フィルハーモニー管弦楽団。74年と67年の音源でプロコフィエフはモノラルとなっています。ライヴの感興で高い演奏効果をあげて閉じていく模様を確認することができます。もっとも注目されるのはグリーグの協奏曲です。モラヴェッツにとっても珍しい曲目でした。十五歳でドイツにわたり、ライプツィヒ学院で学んだグリーグ。その音楽形成にはドイツの音楽が大きく関わりました。グリーグの「シューマン論」は広く知られています。ピアノ協奏曲(1868)にも、シューマンのピアノ協奏曲(1845)の影響を指摘する声は多い。『シューマン論』はシューマン夫人クララにも送られました。バイロイトの新聞に載せたもので内容的にはワーグナーの批難に対し、シューマンを擁護するものです。シューマンの歌劇「ゲノヴェーヴァ」などについても触れ、その音楽的立場を指摘していました。クララは、批難記事の引用などからグリーグの文章を好ましくは思いませんでした。グリーグはピアノ協奏曲にあたり、ワーグナー的な立場にあったリストから多くの助言を得ています。構造の類似から「シューマンの亜流」とは指摘されますが、演奏によっては大きく印象を変えることになります。主題の美しさ、ピアノの技巧、冒頭の圧倒的な効果は独自の魅力を備えています。北欧的な憂愁もここでは叙情も節度を持っています。

ラヴェル、プロコフィエフ作品も録音の年次にかかわらず協奏曲的な魅力で展開します。叙情楽章のゆったりと歌うように進めるやり方は、特に印象に残りました。技巧を注目されることが多かったのですが、そこには音色の美しさがありました。協奏という管弦楽、独奏楽器の音色の対比ではなく、融合した交響的な効果をあげます。

 

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