吹奏楽
 
86年録音。フェネル指揮、東京佼成ウィンド・オーケストラによる吹奏楽名曲集。A.リードの「エル・カミーノ・レアル」を中心にまとめたものです。中高生を対象にしたものですが一般の視聴に耐え得る選となっています。リード作品は「エル・カミーノ・レアル」と「小組曲」。ほかエリクソンの「祝典序曲」、J.バーンズの「アルヴァマー序曲」、オリバドーティの「バラの謝肉祭」、斎藤高順「交響詩オンリー・ワン・アース」、兼田敏「吹奏楽のためのバラード I」、保科洋「吹奏楽のためのカタストロフィ」を収録。こうしたものは幾つも選があります。たとえば「エル・カミーノ・レアル」にはリード博士の自演もあるのですが、吹奏楽コンクールなどの自由曲になっていった楽曲。イーストマン音楽学校で50年代からイーストマン・ウィンド・アンサンブルを組織し、日本でもその力の底上げを行ってきたフェネルの指揮も得がたいものとなっています。40年にはじまる吹奏楽コンクールは大阪で行われました。当初は行進曲が中心。リードの名前は、70年の課題曲となった「音楽祭のプレリュード」とともに記憶されます。作曲には公募が行われるようになり、邦人作曲家の名前が加わるようになりました。ホルストの2つの「組曲」、ヴォーン=ウィリアムズの「イギリス民謡組曲」といったオリジナルの作品あたりから、管楽器を使った編成で、現在に至るまで頻繁に演奏される作品が登場するようになります。標準以上の定型を示してきた東京佼成ウィンド・オーケストラの演奏。A.リードが吹奏楽についての編成を模索し、オーケストラのヴァイオリンにかわって音域の広く自在なクラリネットを配し、ハイドン的なバランスを模索していきます。現在でもブラス・バンドと吹奏楽は混同されています。ブラスは真鍮ですから、金管楽器によるもの。当盤で採り上げるのはウィンド・オーケストラともいうもので、今日、コンクールでは使用楽器に用いる特殊な楽器なども制限されたものとなっています。それは学校教育という場。編成のうちに欠く楽器もあるでしょうし、可変が効くものと楽譜はフレキシブルな対応が取れるようになっています。当初はレパートリーの拡充のためにクラシック作品の編曲が行われて来ましたが、たとえば、弦が映える#系の音楽に対し、クラシックはB♭が主調と♭系の音楽が多くなります。編曲ものは難しいという通例は吹奏楽にもあてはまります。当初は、編曲というよりただ移したトランスクリプションのようなものでした。  
 オリジナルのために、響きを模索してきた歴史。リード博士がもたらしたものは響きの純度とバランス。独立した分野としての吹奏楽の地位向上でした。ソロのパートも多く、ロマン派風の吹奏楽対応の演奏会用序曲が多く書かれました。当盤には収録されているものは、組曲を除き、概ね10分以内の長さに収まっているのはそのためです。これを、コンクールなどの時間配分に応じ、反復を避けたりカットしたりといったことで対応するのでした。アメリカで発達した音楽。そのうちには管楽器の巧みもありましたし、ハリウッド的な景観も反映し、きらびやかな伝統を築いてきました。そういった一連の流れを確認することができます。

クリックよろしくお願いします
 星          
      ↓     
 ペタしてね


 El Camino Real (A Latin Fantasy).Tokyo Kosei Wind Orchestra.


 Overture Jubiloso.Tokyo Kosei Wind Orchestra.