ディーリアス

90~91年録音。マッケラスのディーリアス集成から、ヴァイオリン協奏曲を中心に収めたものです。ヴァイオリンはタズミン・リトル。この協奏曲もビーチャムの編になるもので、当盤では「2つの水彩画」のフェンビー編以外は、すべてビーチャムの編に拠っています。収録曲はヴァイオリン協奏曲以下、「2つの水彩画」、「小管弦楽のための2つの小品」、「間奏曲(歌劇『フェニモアとゲルダ』より)、「イルメリンの前奏曲」、「舞踏狂詩曲1,2番」。解説は当盤のソリスト、リトル。リトルはディーリアン(ディーリアス信者)であり、「ディーリアスは賞賛に値するヴァイオリニストだったに相違ありません」。ディーリアスの多くの作品は穏当なもので、イギリスの田園風景を映し、大きい山場を迎えることなく曲を終わります。コリン・ウィルソンのいう「温いビール」的な特質。多くのイギリス音楽に見られるものですが、ディーリアスではことさらに顕著かもしれません。編曲が多くなるのもパリで罹患した梅毒により、身体麻痺と視力を失ったことによります。その手足、目となって助けたのが代筆者のフェンビーであり、よき解釈者であったのがビーチャムでした。独自のほかに類種の作曲家を見出し難いことから、その音楽のその性向を愛する熱心な信徒、ディーリアンを生み出しました。ワグネリアンと違って局所的なものですが、バルビローリ、そして、当盤のオーストラリアの指揮者マッケラスもその一人です。三浦淳史解説により、ディーリアスの多くの面が紹介されました。素顔のディーリアスは、作風とは別に自身の音楽をつくりあげていく中、他者に向けての容赦のない辛辣な発言があり、それはそのままディーリアス独自の音楽がどういうものであったかに直結しています。心中の激情はあまり、作品にはあらわれない。それでも、山のない音楽を支えるものには情感があるのです。リトルはディーリアスがメンデルスゾーンをけなしている中、そのヴァイオリン協奏曲への愛を失わなかった旨、記しています。ディーリアスの両親はドイツ人であり、その受けた教育、音楽の吸収にもライプツィヒで学んだ時代がありました。そこで触れた音楽。とりわけグリーグの影響。当時のイギリスもノルウェーも音楽の地としては辺境であり、ディーリアスもフランスに移り、フランスに没しています。
 その協奏曲。最初に名声を博したピアノ協奏曲。「私としては、ポピュラーな成功を達成するために、私の道から一歩たりとも踏み外したくはありません」。模倣を嫌い、独自の道とは、管弦楽と独奏パートが対等に渡り合う作品でした。名技性が抑えられ、独自の音楽の中に、独奏楽器が存在する。リトルの次の言葉が作品の特徴を捉えています。「私が始めてこの作品の準備を始めた時、私は自分一人で練習するのがこの上もなくむずかしいのに気づきました。オーケストラ・スコアのピアノ版はほとんど役に立たなかったのです。スコアリング(スコアの書法)は曲の全体像を理解するのに重要でした。交響曲の中の一部のように独奏楽器を持ち込んだブラームスの協奏曲のシンフォニックなものとは違う。単一楽章で、旋律はきわめて息の長いものです。これにとどまらずヴァイオリンを用いた作品は多い。当盤には「小品」中の「春を告げるかっこうを聞いて」や「イルメリンの前奏曲」などビーチャムやバルビローリで親しんだ馴染みのものが登場するのですが、それらと同様、融和や、協和といった管弦楽が支えます。


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以下当盤ではありません

Frederick Delius - Violin Concerto (1916)
Ralph Holmes, violin and the Royal Philharmonic Orchestra conducted by Vernon Handley

Delius: Double Concerto for Violin & Cello (Royal Liverpool PO, Mackerras)