もっと手近に屋内プールもあるのだが、やっぱり『避暑』を連想させるのは『野外』である。

流れるプールがあって、小振りながらウォータースライダーもある。
年に一度は豊島園とかにも行きたいが、日常空間の遊び場としては、かなりのお気に入りスポットである。
私の子供の頃は、流れるプールなんて知らなかった。
学校の授業で、先生が子供たちに
歩け歩け~、とプールの中を一方向に回らせた。
はい、ストップ~!
一斉に立ち止まった私たちは、いつの間にか生まれていた渦に身体が浮き上がり、歓声を上げた。
人力で作った流れるプールである。
さて、今やどこにでもある流れるプール。
浮き輪に乗ってプカプカ流れながら考えた。
………緩すぎる
出来損ないの桃みたいに浮いてるなんて芸がない。
「危険を承知で入ってください」
なんてプールもあったら面白い。
急流で蛇行した、流れるプールならぬ『溺れるプール』
そうなると、監視員もピリピリと緊張する。
日に何人も溺れる奴が出る。
お客は臨場感溢れるライフセーバーを実地で見物できる。
イケメンの監視員目当てに無理してプールに入るオネエちゃんがいる。
いいな~、と羨ましがりながら、ニイちゃんたちは子供用プールにしかいない女性の監視員をチラ見する。
………う~む、ゲスな発想である。
さて、この市民プール、初めて訪れたのは一昨年の秋だった。
シーズンオフ直前、ガラガラ。
ウォータースライダーも並ばずに何度も滑れた。
正直、寒かった。
でも人混みが苦手な私たちは大いに気に入った。
曰わく
「やっぱり避暑に来るには寒い日に限るね~」
閉館の五時が近づくと、プカプカ浮いているのは私たちを含め2組の家族、5人だけ。監視員の数の方が多い。
職務に忠実な監視員の若者たちは、配置された場所で事故はないかと隅々まで眼を光らせている。
隅々も何も……こっちは5人しかいない。
でも、決して眼を合わせない。
合わせないけど、全身からオーラが立ち昇っている
───早く帰れよォ~
今日は一日中曇天。
どことなく肌寒い。きっとプールは空いてるぜ。
こんな寒い日こそ行かないで、いつ行くんだ~
──という訳の分からない理屈で、浮き輪を引っ張り出し、おっとり刀で出かけていった。
今年初めてのプール。

曇天、つまり天然のサンバイザー付きだから日焼けの心配はない。
ポツポツ天然のシャワーも降っていた。
予想よりは混んでたが、3時を前にしてガクンと人が減る。
水に浸かった下半身はそうでもないが、上半身は既に肌寒い。

ガランとしてきたプール全体に散らばり、監視員の若者たちは、客の数に関わりなく忠実に業務を全うしている。
既に人影のない幼児用プールをじっと監視している子もいる。
流れながら、次々と現れる監視台を見上げていた。

ふと、気がついた。彼らは決して私と眼を合わせない。
もし、私が小さい子なら、眼を見てにっこり微笑むだろう。
意地になって見つめ続けた。
彼らは遠くに眼を泳がせて、決して私を見ない。
これを読んだ人は、オヤジが女の子の監視員に嫌がらせをしたと思うだろうが、
そうではない。
男の子にも平等に嫌がらせをした。

若者は美しいな、と単純に思う。
それは屋外で真面目に働いている若者の姿である。
元々小麦色の彼らの皮膚は、焼けて剥がれてを繰り返し、シーズンオフを迎える頃には真っ黒に変色していることだろう。
若さとは美しい
健康とは美しい
それは男でも女でも──
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