私たち夫婦はそう思っている
うちのコだからである

その あっきが野良に戻って3日目、たまに現れてエサを欲しそうな素振りはするが、警戒して近寄らない。
そんなに家猫にされるのが嫌なのだろうか
「もうダメかな?」
「でもね」と妻が言う「何か、くたびれて ハフハフしてるよ。ロクに食べていないんじゃないかな」
あっきは甘えん坊で、母猫・月子に最後まで付きまとっていた。とても喧嘩が強いとは思えない。縄張りも持てないだろう
「セミぐらいしか食べていないんじゃないの」
「あんなもの、腹の足しになる?」
「でも羽根が落ちてたよ」
それに あっきは悪食だ。食べ物と異物の違い分からない
ゴムチューブを飲んで病院に運ばれている。糞には時々 発泡スチロールが混じっている。
野良で逞しく生き延びられるヤツじゃない。
誰かの庇護を受けるために生まれてきたようなヤツだ。
でも、嫌がるものを監禁してまで長生きさせるのが正しいのか――
かつての ふぁい・みるも、そして けいたも、隙があれば外に出ようとするが、お腹が空けば戻ってきた。つまりここが自分の家――縄張り――だとは思っている
何度呼んでも、エサを見せても敷居から奥に入りたがらない あっき
妻は庭にポツポツとエサを置き、敷居の中まで誘い込もうとする。
二年前の繰り返し――
こいつにとって、私たちと暮らした歳月は何だったのか、どんな記憶として残っているのか?
3日後、遂に妻があっきを捕まえた。
敷居に乗り出した首を掴んで家の中に引きずり込んだ
親指の付け根にがっちりと爪が食い込み、妻の手は見事に腫れあがった。バイ菌が心配だったので、翌日病院に行った。
私たちは考えた
もし野良生活で雑菌やノミに感染していたとすれば、家の中に撒き散らすことになる。
けいたはまだしも、おめぐは幼猫である
しばらく、閉じ込めるしかないね
物置代わりの奥の間に潜んでいる あっきに向けて毛布を広げる――
猫カゴに誘導しようと追い込んだら、
驚くぼど簡単に、ストッとカゴに飛び込んだ。
そのままリビングの2段ケージに放り込む

かつてー泊旅行の後に試した「あっき・家猫化計画」の再現
人間のいる環境に慣れ、怖がらなくなるまでここに監禁する

恐怖に引き攣る表情は「野良」そのもの。
これをラス卜トライアルとしよう
二人で話し合った
これで馴染まなかったら、野良に戻そう
きっと最初から縁がなかったのだ
条件は
目が合っても逃げないこと
抱っこさせること
そして、爪を切らせること
前回は運動不足が心配で、一週間でケージから出した
今回は徹底的にやる!
で、どれだけ嫌がるかと思ったら……
多少ふて腐れてはいるけれど、暢気に座り込んでいる

けいたが入りたそうだったから誘ったら

トコトコ入っていっちゃった
何にも考えていないんだね、こいつら……
結果――
一週間経った頃、私が外出から戻るとケージの扉は開けられていた
「クリアしたよ」
ビニール袋の中に爪が入っている
抱っこして爪切りが出来たから、解放した――
で、どこにいるの?
奥の部屋に隠れちゃった
結局、逃亡前に逆戻り
ただ、ほんのちょっと、変わったような気がする。私の足許を平気で横切るようになった
でも、こちらから近寄ると逃げる。
このまま、また何年も続いていくんだろうな
あっきが野良をやめるとすれば
逃げるのが億劫になった時だろう
あっきにとって、3日間の外泊は記憶の彼方
あんなにテンパッて あっき探しをした妻も前の通り
事件はいつも小さくて、わずかな変化を留めるだけ
「家庭内野良・あっき」の日々は、なんとなく続く――
