揺るぎなかった妻の信念がグラつき始めている
家庭内野良、あっきとけいた
隙あらば家から逃げ出そうとする
猫ってそういうもの、たまには外の空気も吸いたくなる。でも、それで満足したら「ああ、お腹が空いた~」とばかりに戻ってくる――
でも、今回は様子が違う。
一昨日、いつの間にか開いていた網戸
気がつくと あっき・けいたがトコトコと外を歩いている
せっせと庭でトイレの穴掘りをする モグラの けいた

それを悠然と眺める あっき

やれやれ……
妻は猫オヤツを持ち出して屋内におびき寄せる
けいたは戻ってきた
こら!ダメでしょ!
首根っこを押さえられて身体をゴシゴシ拭かれている。やめろよ~と抵抗する
そのあと、しばらくは怒っていたが、やがて『妖怪大戦争』の「すねこすり」よろしく足に擦り寄って訴え鳴きする
エサだよエサ~
さっきまでの不機嫌も忘れている
暢気なヤツだな~、と私達は笑う
でも、あっきは
2晩経った今も、家に戻ってこない。
時々、表や裏庭に姿を見せるが、呼ぶと逃げる。
エサを置いて離れると、警戒しながら上目使いで食べる
2年前に逆戻り――
妻は家の周りにエサを撒いておびき寄せよう、と言う
私は止めた
ここが自分の暮らす家であることは百も承知、今さら野良を捕獲するようなマネはよ
せよ、反って他の猫が寄ってくるぜ
妻はあっきが姿を見せる度に、エサで根気よくおびき寄せる
そして――折れた
もううんざり!野良に戻そうか
かつて、ふぁい・みるは生後1ケ月、ダンボール箱で捨てられた直後に拾った
おめぐは迷い猫で息も絶え絶えのところを保護した
だから人間を怖がらない。時にダッコされて安心した顔をする。
あき・けいは野良でいるのを「捕獲」した。
「保護」したつもりなのは人間だけで、彼らにとっては暴力でしかない。
野良より家猫の方が幸せ、安心で長生き出来るから――揺るがなかった妻の信念
そうかな?野生を失うのが良いことと言い切れるかな――懐疑的な私とはいつも意見が合わなかった。
でも、2年も暮らして警戒心の解けない猫。
家猫化計画は、人間が押しつけるエゴでしかなかったのか?
この猫が野良でいたいというのなら、私たちは敗北宣言をするしかない
「野良猫あっき?」
――その警戒に満ちた眼付き

白い毛は、やがて灰色にすすけていくだろう