夜、眼が突然「バリリ」といった。
このバリリが擬態語か擬音語かはビミョーだが、私には音が聞こえたような気がした。
そして左眼にスクリーントーンのような黒い大きな点画が現れた。
眼球を動かすと、この画が「ぐいんぐいん」と形を歪めて動く。この、ぐいんぐいんは擬態語である。
要するに、大きな飛蚊症が出来たのだ。
この、黒い点画のような飛蚊症、眼を細めてよくよく見ると、愛猫ふぁいの後ろ姿に似ていた。
だから、帰りの新幹線の中で、左眼を細めながらスケッチした。
その時の絵は、もうない。
でも、ふぁいの画像なら、ある。
↓こんな形

これが左眼の視野いっぱいに広がっていた。
そして症状が収まるまで、左後ろに何かがいるような錯覚がして、しょっちゅう後ろを振り返っていた。
さて、眼科医に行って、瞳孔が開きっぱなしになる薬を投与され、検査を受けた。
診断は───
歳のせいです
───何だよそれ!
要するに、歳を取って、眼の水晶体に弾力がなくなり、眼窩からバリリと剥がれた。
その時の出血が黒く見えているらしい。
治療法は?
──有りませんねぇ、歳のせいですから
日頃気をつけることとか、予防法とかないんですか?
──有りませんねぇ
何だよ!
そんなら医者なんていらんじゃないか!
納得がいかないので、もう一軒、眼科医に行った。
バチンと瞳孔を開かれて検査を受けて、結果は
───歳のせいです
かくて老人ファイミルは瞳孔の開いたまま、妻に手を引かれてトボトボと(擬態語)家路についたのであった。
その頃からである。
人間ドッグのエコーで肝臓に陰があっても、聴力検査の結果が悪くなってても
───年令に伴うものだと思われます。
実際、眼の不調はそのまま続いている。特に東京通勤になってからが酷い。
空気の汚さ、煤煙(光化学スモッグ?)のせいじゃないかと思う。
視界が暗くて、眼がしょぼつく。
どうせ日常生活で、見たい現実なんてないから、眼の能力が落ちたって構わない。
でも、ライブ会場──暗い上にライトが激しく明滅する──でのprediaのパフォーマンスが見づらい、眼で追いづらいのは困る。
▷▷▷▷▷
さて、この数週間、咳の症状が止まらなかった。
病院に4回行って、一ヶ月あまり薬を飲み、喘息患者が持ってるような吸入器も買わされたが、さっぱり効かなかった。
夜、横になってからの咳込み方が酷い。眠れないから、体力も落ちていく。
それでも、結核、肺炎、百日咳───いずれも検査では見つからなかった。
で、医者の結論
───長年、タバコを吸ってきたからじゃないですか
近頃の医者は何でもタバコのせいにする。
昔のタバコに比べれば、今のタバコはずいぶん軽い。私はニコチン3mgである。
そうそう誰もが身体を壊すもんか。パイプ吸ってる人はどんだけ早死にするんだよ。
私は、眼の劣化と同様、空気のせいだと思っている。
札幌なら、大通りでも深呼吸出来る。新宿やら銀座やらで深く空気を吸おうものなら、途端に咳き込む。
野生動物ファイミルは都会の空気に適応出来ないのである。
薬も切れたまま放っておいたら、徐々に症状は軽くなってきた。今は寝付けないほど咳き込む、ということはない。
結局は自然治癒力だろう。
さて、病院の話に戻って
肺活量の検査を受けたら、肺年令は80歳、と出た。
「でも、咳込みながら測ったら、数値も悪いですよね」
と言ったら
「まあ、そういうこともありますね」
と医者は呑気に笑った。
それでも、この医者なんかは上出来な方で、中には患者が口答えすると怒りだすヤツもいる。
医者は頭が良くてエライから、患者ごときに逆らわれたら不快なんだろう。
一度体調不良で医者にかかったが原因が分からなかった時───
気のせいだ
───と言われたことがある。
西洋医学なんていい加減なものである。
対処療法で薬を出して、その薬の副作用を抑える薬を上乗せする。
医学→科学→事実の追究
でも実体は恣意的な結論づけと当てずっぽう。
人間の知識の限界なんて、そんなもんだ。
結局は、個体が持っている自然治癒力──野生の力──に頼るしかない。
妻に薬を勧められると、私はいつもこんな事を言う
───薬に頼るなんて、野生動物としてのプライドが許さない!
どうせ「歳のせいで」死ぬのなら、病院でチューブに繋がれるのは嫌だ。
もっと自然体で死にたいと思う。
そのくせ、ちょっと身体の何処かがおかしくなると、妻に連れられてオドオドと病院に行く。
凛々しさの欠けらもない。
野生動物を気取るファイミル、
その実体は──
ただの偏屈な田舎のオジサンだったりする。
ふん!
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