Retro Memory

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The memorable music albums

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メロンコリーそして終りのない悲しみ/スマッシング・パンプキンズ






シカゴのオルタナティブロックバンドの95年リリースの3作目。

インディシーンが成熟し始め、シアトル勢らの台頭によって、オルタナティブロック隆盛を迎えていた中、88年にシカゴで結成したこのスマッシュ・パンプキンズは、特にニルヴァーナと比較されることが多かったようで、ネクスト・ニルヴァーナとも揶揄されていたそうだが、「Nevermind」をプロデュースしたブッチ・ヴィグと共に制作した93年リリースのセカンドアルバム「Siamese Dream」では、パンプキンズならではの独自性を発揮。アルバムは、ビルボードチャートのトップ10入りを果たし、全米だけで400万枚、世界で600万枚以上ものセールスを記録する大ヒットに。

爆発的な成功を収めて勢いに乗り、セカンドアルバムに伴う13カ月もの長期ツアーを終えると、ビリー・コーガンは多くの楽曲を作曲し、音楽的にもレンジの広いアルバム作品を制作しようと画策。そして、制作された本作では、28曲を収録したダブルアルバムとして完成。プロデューサーには、U2との仕事で知られるフラッドと、そのフラッドとそれをサポートするアラン・モールダーのプロデュースチームが選ばれた。

リリース後、ビルボード首位に立ち、その後全米で470万枚ほど売って、9xプラチナムを達成(ダブルアルバムなので、倍にカウントされる。)。この10年で最も売れた2枚組のアルバムとなり、内容もかなり好意的に受け止められて、97年のグラミー賞では、ベストアルバムを始めとして、7つの部門でノミネートがされた。

当時のオルタナティブロックバンドは、シャツにジーパンくらいの非常にラフな格好がほとんどであった中、ファッションにも関心が高かったスマパンのメンバーは、ゴシック調のオシャレな姿のイメージが強く、そういう意味でも、独特な個性を持ったイメージのあるバンドなんだけども、音楽の方も、グランジであったり、すごくメタリックであったり、とてもドリーミーでポップであったりと、これまた他のロックバンドにはないようなバランス感覚を持った音楽性の持ち主で。

ビリー・コーガンのクセのある歌声は、なかなか好き嫌いが分かれるとこもあるでしょうが、本作品は優しく包み込むように聴かせて心地良く癒していく、良質なメロディ楽曲がある一方、鬱積した感情を爆発させるかの如く、ザクザクとギターを爆音で鳴らしてる場面も刺激的で、通して聴くと、全体的に非常に重厚でいて、かなり起伏にも富んだアルバム作品で、途中でダレることもなく、見事な大作として成立している。2時間以上も収録した作品であるだけに、悲哀に満ちた耽美と沸き上がった強く攻撃的な感情を行き来する、この時のスマパン独自世界を思う存分味わうことが出来る。
Yield/Pearl Jam






シアトルのロックバンドの98年リリースの5作目。プロデュースはブレンダン・オブライエン。

パール・ジャムと言えば、ニルヴァーナの「Nevermind」の後を追うかのように、売り上げを伸ばし、結果的にアメリカだけで1300万枚以上の売り上げを記録したデビュー作「Ten」に始まり、続く93年の2枚目「Vs.」もビルボード初登場で5週連続1位を獲得し、700万枚の売り上げで、シアトルを中心にしたグランジロックブームをバカデカいものに押し上げた立役者的な存在。

94年春のカート・コバーン自殺によって、グランジブームは急速に収束に向かっていってしまうものの、パール・ジャム自体のその後リリース作品は、プラチナ、ゴールドディスククラスの好セールスの作品を作り続け、今やアメリカを代表するロックバンドの1つに挙げられるほどの存在になっている。昨年の最新作である「Backspacer」は、再びビルボードのアルバムチャートの1位に返り咲くという活きの良さを見せている。

別に個人的には、当時パール・ジャムのファンというわけじゃなかったのだけど、この作品は、試聴機で耳にして、衝動的に手を取ったという作品で。改めて、聴き返してみると、やっぱ格好良いっすね。抜けたサウンドに爽快感があって、ボーカリストのエディ・ヴェダーのパフォーマンスはカリスマであり、バックのバンドの演奏はとても安定しているし、かつ躍動的で、単純に格好良いギターロックバンドで。近年のアルバム作品のエネルギッシュさから、パールジャムの格好良さにしびれていたけど、わざわざ引っ張り出して聴いたこのアルバムも良いアルバムだなぁ、と。

当時、グランジロックというムーブメントの中で語られていたパール・ジャムは、どうしてもニルヴァーナ人気と比較されてしまいがちで、メディア上では、バンド同士でも舌戦を繰り広げていたそうですが、音楽的には、ニルヴァーナとパール・ジャムとではかなり別物で、双方、X世代の救世主といったところは同じでも、結局は同じところから出てきた人気者同士の避けられない宿命といったところでしょうかね。

鬱積した感情を乗せ、パンキッシュに繰り広げていたニルヴァーナに対して、パール・ジャムはもっとハードロック文脈で語られるようなギターロックバンドであり、音楽から感じ取れる音楽的影響も、ニール・ヤングだったり、南部のロック音楽だったりと、伝統的な流れを踏まえたアメリカライクなギターロックという感じで、だからこそ、その親しみやすさから人気が出たのかなと気もしなく、そこに表現者としてのエディ・ヴェダーが乗っかったものだから、大きな支持を得たのだろうと。

しかし、日本人には、その辺の理解や持ってる感覚が少し遠かったりして、ニルヴァーナほどの親近感を得ていないことも確か・・・でもかっこいいんだぜ。
By Your Side/The Black Crowes






ジョージア州アトランタのロックバンドの99年リリース5作目。

まだ10代、20歳くらいの若さだったクリス&リッチ・オービソン兄弟らを中心に、ローリング・ストーンズ、オーティス・レディング、オールマン・ブラザーズ・バンド、フェイシズ、ハンブル・パイといった黒人音楽または70年代ブルーズロック、サザンロック音楽に影響されたバンドを結成。

それが当時のデフ・アメリカンとレーベル契約し、90年にデビューアルバム「Shake Your Money Maker」をリリースすると、いくつかのヒットシングルに恵まれ、アルバムもビルボードチャート4位までに到達し、セールス的にも300万枚以上を売るという快挙に。またその次にリリースされた92年リリースのセカンドアルバム「The Southern Harmony and Musical Companion」はいきなりビルボードチャート1位を獲得。

いきなり飛ぶ鳥を落とす勢いだったが、それもこんなに若いのに、伝統的ないぶし銀ロック音楽をやっているという話題性と、その話題性にだけに全く負けることのない、本格的なロックバンドとしての圧倒的なライブ能力、実力の高さへの賞賛が巻き起こって得られた結果であると言える。

そんな衝撃的なデビューとチャートナンバー1の獲得の後も、94年3作目「Amorica」、96年4作目「Three Snakes and One Charm」とアルバムをリリースし、最初のような勢いは落とすものの、依然として高い評価と根強い人気を残していた。

前3作を同じライナップで通していたバンドから、ギタリストのマーク・フォードが解雇され、それに続く形で、ベーシストのジョニー・コルトが脱退。取りあえず、新しいベーシストのスヴェン・バイビーンを加入させ、ギタリストをリッチ・オービソンの1人にしたまま、新作レコーディングに入り、ここでレーベルもコロンビアに移籍している。それで完成してリリースされたのが本作。

その後、99年10月にレッド・ツェッペリンのジミー・ペイジがこのバンドにジョイントし、ツェッペリンの楽曲を中心にしたライブをやって、それをライブアルバムとしてリリースしたり、01年には、6作目「Lion」をリリースしたりしていたものの、その翌02年には、バンドは活動休止状態に突入。オービソン兄弟はそれぞれでばらばらに活動していた。

05年にバンドはメンバーを一部変えるという形での再結成を果たし、08年には7年ぶりとなる7枚目のアルバム「Warpaint」がリリース。これは2枚目の「The Southern Harmony and Musical Companion」以来となるビルボードアルバムチャートトップ5に返り咲いている。

さて、このアルバム。メディアからは「デビュー作以来のストレートな作風」として書かれていたようですけど、このらしくないとさえ思えるほどの出だしのスピード感や、語弊を恐れずに言えば、「エアロスミス化」とも思えるほどの、このわかりやすさや掴みの良さは、随分驚いたものです。

個人的には、こんな調子の良いロックンロールじゃなくて、もっとずっと泥臭くて、レイドバックした感じでも良かったし、彼らには長く吸える葉巻のように味わい深く、グルービーに聴かせてくれるブルーズロックというのを求めてしまうとこがあって。まぁ、その分即効性みたいなのは大分減ってしまいますけど。

もしかしたら、長いキャリアの中にはこういう作品もたまには必要なのかもしれないし、彼らの作品群の中で時系列的に考えると、作品を進めるごとに進化や実験性を求めていったいぶし銀の彼らが、スタートラインに一度立ち返って、パンチの利いたストレートな作品で刺激を求めたのは、実に必然的なことだったかもしれません。

とはいえ、良く捉えれば、日本人にはあまりすぐには馴染みにくい、こうしたブルーズロックバンドへの入門アルバムとしては、とても都合の良いアルバムで、これを聴けば、彼らのカッコ良さなど、一聴瞭然とも言えます。

1曲目の「Go Faster」からぶっとばしてくれる感じが痛快だし、そこからなだれ込んでいく2曲目のゴキゲンなサビを持つ「Kickin' My Heart Around」でインパクトは頂点。アルバム中盤からは聴かせどころもあり、「Welcome to the Goodtimes」のようなシンガロングできるような楽しめる部分があったり、全曲捨て曲なしで、綺麗にまとめているのはさすが。アルバムのサイズ自体もコンパクトになっていて、手に取りやすいものになっています。
メトロポリス・パート2 : シーンズ・フロム・ア・メモリー/ドリーム・シアター







バークリー音楽大学に通う仲間同士で結成したプログレッシブメタルバンドの99年5作目。

一番最初に彼らが知名度を上げたのは、92年リリースのセカンドアルバム「Images and Wards」。もともと高く評価されていたバンドの演奏技術に加え、ボーカルオーディションで歌唱力の高さが認められたジェイムス・ラブリエが加入。その後生まれた「Images and Wards」のシングル曲となった「Pull Me Under」がMTVやラジオステーションから火が付き、アメリカでは、アルバムがゴールドディスクとなる売り上げに。さらにその上を行ったのがこの日本で、このアルバムの高い評価が大々的となり、プラチナディスクになるまでに到達。バンド自身の最大のヒット作になった。

99年、デレク・シュリニアンからジョーダン・ルーデスにキーボード・プレーヤーが交代すると、それ以降はメンバーが変わらずにバンドのラインナップとして完成され、昨年にリリースされた10作目となる「Black Clouds&Silver Linings」まで、途切れることなくコンスタントに作品をリリース。安定した高い作品レベルと最高の技巧派演奏集団としての評価を得続けている。

本作は、今のその安定したラインナップとなってからの1作目であり、バンドにとっての初のコンセプトアルバムになっている。アルバムは、「Images and Wards」収録曲の「Metropolis」の続編となるような内容で、2幕9場から成るストーリー物。ニコラスという青年が催眠療法にかかり、自分の前世であるヴィクトリア・ペイジという少女の人生を探ることで、自分自身が何者であるかを知り、生きる活路を見出していくというストーリー。

自分が彼らに初めて触れたアルバムは、このアルバムの前作「Falling into Infinity」からで、その前のダークな作風だった「Awake」の反動からか、ドリーム・シアターにしてはコマーシャル性のあるアルバムにもなっていて、それはそれでなかなか良かったのですが、ああいう知的で、演奏力の高い彼らが作り込んだコンセプト作品をリリースして、それを聴いて、強烈なインパクトを受けて、すげーな、これは、と思わされて。

さすがにこの人たちの聴いてて笑っちゃうくらいの演奏テクニックの高さは度肝を抜くし、しかもそんな聴きどころの多い演奏力の高さばかりでなく、しっかりこれがドラマとして演出され、情感が込められ、この綴られていくストーリーが魅力的に映し出されている事が素晴らしい。

自分と前世を行き来する間に、三角関係という複雑な人間関係のドラマがあり、サスペンス感覚があり、エンターテイメントがあり、気持ちに訴える感動もあり、そして卓越した演奏力と表現力、そうした数々の要素が集まって、とてつもない完成品を生み出しており、彼らの傑作品と言える1枚です。
Alien Love Secrets/Steve Vai






ギタリストのスティーブ・ヴァイの95年にリリースされたソロEP。

ギターを手にした途端、ジョー・サトリアーニの元へ行って、ギターを学び、高校時代ですでに音楽理論を習得して、バークリー音楽院に入学。そのうち、スティーブの器用にこなしてしまう音楽的才能がフランク・ザッパに気に入られて、バンドの一員に。84年に初のソロアルバムをリリース。その後グラハム・ボネットのバンドのアルカトラズに、イングウェイ・マルムスティーンの後釜で加入した。

翌85年、元セックス・ピストルズのジョン・ライドンのバンド、パブリック・イメージ・リミテッドのアルバムに、坂本龍一やジンジャー・ベイカーらと参加。そして、元ヴァン・ヘイレンのデヴィッド・リー・ロスのソロバンドに誘われて加入。2枚のアルバムをリリースした後、ソロアルバム制作に着手。89年、デヴィッド・カヴァーデイルのバンドホワイトスネイクに加入。そのアルバムリリース、ツアーに参加しながら、自らのアルバムの制作も進め、翌90年には、「Passion and Warfare」をリリースし、インストゥルメンタルアルバムでありながら、ビルボードアルバムチャートトップ20入り、ゴールドディスクに到達。

ホワイトスネイクの活動が終わると、オーディションでボーカリストを探し、カナダ・ヴァンクーバーのローカルバンドで活動していたデヴィン・タウンゼントを発掘。VAI名義で、「Sex & Religion」をリリース。再び、ソロ活動に転じたスティーブは、自らのアルバムの制作をしながら、オジー・オズボーンやビリー・シーンを始めとする多くのコラボレーションに積極的に参加し、師匠のジョー・サトリアーニやエリック・ジョンソンと共にG3ツアーにも加わった。2002年には、東京都交響楽団とサントリーホールで競演。またゲーム音楽、映画音楽のサウンドトラックにも関心が高く、いくつか手掛けていたりします。・・・まぁ、ひっくるめて言うと基本、仕事人って感じですかね。

スティーブ・ヴァイの存在を知ったのは、デヴィッド・リー・ロスの「Eat 'Em and Smile」です。これが出た当時は、多分スティーブ・ヴァイはアルカトラズのおかげで、日本では知名度はあったと思いますが、恐らく本国ではまだローカル人気レベル、ミスター・ビック以前のビリー・シーンなんてまだ全然無名だったはずで、今ほどスーパーバンドのイメージはなかったと思いますが、僕が接した時はもう、あのダイヤモンド・デイブだったし、あのスティーブ・ヴァイだし、あのビリー・シーンだしっていう。それにミスタービックでやってた「Shy Boy」がここに入ってるっていうのも興味を持つ理由でしたかね。ここでデイブ・リー・ロスがスティーブ・ヴァイを起用する意味は分かりますよね。明らかにエディに対抗できる器用なギタリストっていう意識ですね。

次に接するのが、デヴィン・タウンゼントを擁したVAIの時で、彼のアルバムは基本インストなので、ボーカル入りだったら、聴けるかなくらいで買ったと思います。ここで思い出すのは、やはり当時の印象的過ぎたデヴィン。伊藤政則氏のテレビ番組に出てて、観て思ったのですが、とにかくものすごく落ち着きのない若者で、イメージ的にはスキッド・ロウのセバスチャン・バックとイメージが重なるとこがあり、ひょっとしてヴァンクーバーの人ってこんなぶっ飛んだ人ばかりなのかね、って思ったりもしたりして(笑)。ボーカルのみならず、スティーブと張り合えるくらいバカテクのギタリストでもあったことはすでに喧伝されていたせいか、彼が何かこれから先すごいものを作ったり、やったりする人なんじゃないかなぁという期待感は当然ありましたが、デヴィンがその後あそこまですごいキャリアを重ねると思いもしませんでしたね。アルバム自体は、奇才が集まって出来たような変わり種のアルバムで、自分が理解するのには少し時間がかかりましたが。

その次に接したのがこれでした。これは翌年にリリースされた4作目「Fire Garden」に入りきらなかったものをまとめたもので、それを後で出さないで、先に出してしまうのがスティーブ・ヴァイですが、全部インストでも、これが聴いてて面白かったんですよね。スティーブ・ヴァイのアルバムは、基本知的かつ奇天烈で、独特な美学を持った、常人には理解しづらい作風が少なくなかったりしますが、これはそれでもかなりストレートな曲が多く、それでいて驚かされるようなテクニックが多くて、素直に楽しめるものになっていました。

とにかく器用な人で、一通りの速弾きが出来るのも当たり前、まるでしゃべるようなギターも出来るっていうのが凄い。自分の息子の声をサンプリングとして録音して、それを曲の中で、ギターでまんまなぞったりできるのも彼ならでは。かと思えば、気持ちのこもった叙情的なギターソロも圧倒的なテクニックで弾ける。取りあえずこの人、ギターを熟知しててなんでも弾けるんだな、みたいな。ギタリストとして、超絶なテクニックの持ち主なのがすぐわかる圧巻の作品。