By Your Side / The Black Crowes | Retro Memory

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By Your Side/The Black Crowes






ジョージア州アトランタのロックバンドの99年リリース5作目。

まだ10代、20歳くらいの若さだったクリス&リッチ・オービソン兄弟らを中心に、ローリング・ストーンズ、オーティス・レディング、オールマン・ブラザーズ・バンド、フェイシズ、ハンブル・パイといった黒人音楽または70年代ブルーズロック、サザンロック音楽に影響されたバンドを結成。

それが当時のデフ・アメリカンとレーベル契約し、90年にデビューアルバム「Shake Your Money Maker」をリリースすると、いくつかのヒットシングルに恵まれ、アルバムもビルボードチャート4位までに到達し、セールス的にも300万枚以上を売るという快挙に。またその次にリリースされた92年リリースのセカンドアルバム「The Southern Harmony and Musical Companion」はいきなりビルボードチャート1位を獲得。

いきなり飛ぶ鳥を落とす勢いだったが、それもこんなに若いのに、伝統的ないぶし銀ロック音楽をやっているという話題性と、その話題性にだけに全く負けることのない、本格的なロックバンドとしての圧倒的なライブ能力、実力の高さへの賞賛が巻き起こって得られた結果であると言える。

そんな衝撃的なデビューとチャートナンバー1の獲得の後も、94年3作目「Amorica」、96年4作目「Three Snakes and One Charm」とアルバムをリリースし、最初のような勢いは落とすものの、依然として高い評価と根強い人気を残していた。

前3作を同じライナップで通していたバンドから、ギタリストのマーク・フォードが解雇され、それに続く形で、ベーシストのジョニー・コルトが脱退。取りあえず、新しいベーシストのスヴェン・バイビーンを加入させ、ギタリストをリッチ・オービソンの1人にしたまま、新作レコーディングに入り、ここでレーベルもコロンビアに移籍している。それで完成してリリースされたのが本作。

その後、99年10月にレッド・ツェッペリンのジミー・ペイジがこのバンドにジョイントし、ツェッペリンの楽曲を中心にしたライブをやって、それをライブアルバムとしてリリースしたり、01年には、6作目「Lion」をリリースしたりしていたものの、その翌02年には、バンドは活動休止状態に突入。オービソン兄弟はそれぞれでばらばらに活動していた。

05年にバンドはメンバーを一部変えるという形での再結成を果たし、08年には7年ぶりとなる7枚目のアルバム「Warpaint」がリリース。これは2枚目の「The Southern Harmony and Musical Companion」以来となるビルボードアルバムチャートトップ5に返り咲いている。

さて、このアルバム。メディアからは「デビュー作以来のストレートな作風」として書かれていたようですけど、このらしくないとさえ思えるほどの出だしのスピード感や、語弊を恐れずに言えば、「エアロスミス化」とも思えるほどの、このわかりやすさや掴みの良さは、随分驚いたものです。

個人的には、こんな調子の良いロックンロールじゃなくて、もっとずっと泥臭くて、レイドバックした感じでも良かったし、彼らには長く吸える葉巻のように味わい深く、グルービーに聴かせてくれるブルーズロックというのを求めてしまうとこがあって。まぁ、その分即効性みたいなのは大分減ってしまいますけど。

もしかしたら、長いキャリアの中にはこういう作品もたまには必要なのかもしれないし、彼らの作品群の中で時系列的に考えると、作品を進めるごとに進化や実験性を求めていったいぶし銀の彼らが、スタートラインに一度立ち返って、パンチの利いたストレートな作品で刺激を求めたのは、実に必然的なことだったかもしれません。

とはいえ、良く捉えれば、日本人にはあまりすぐには馴染みにくい、こうしたブルーズロックバンドへの入門アルバムとしては、とても都合の良いアルバムで、これを聴けば、彼らのカッコ良さなど、一聴瞭然とも言えます。

1曲目の「Go Faster」からぶっとばしてくれる感じが痛快だし、そこからなだれ込んでいく2曲目のゴキゲンなサビを持つ「Kickin' My Heart Around」でインパクトは頂点。アルバム中盤からは聴かせどころもあり、「Welcome to the Goodtimes」のようなシンガロングできるような楽しめる部分があったり、全曲捨て曲なしで、綺麗にまとめているのはさすが。アルバムのサイズ自体もコンパクトになっていて、手に取りやすいものになっています。