たまにホラーが見たくなっちゃう。今回はフィンランドが舞台のホラー作品にしました。誰も見たことない俳優ばかりだからなんか違和感なく楽しめるかなって。ハリウッド作品だと内容がどうあれ俳優で格付けされちゃうじゃない?

 

 

北欧の美少女がヒロインのホラー作品です。12歳って設定だけど実際子供なんだろうしこんなコワイ作品に出て良いのかしら??海外の映倫はどうなってるんだろう。

 

 

 

見終わった感想ですが、うん、エグイ。そして不気味だけどキレイな作品でした。母親役の女優なんて鼻水たらして迫真の演技だった。

 

 

 

主役の子は体操の選手って設定だけど体操してそうな体形だったし、吹替じゃなくて本人が演じてたのかな。すご~い

 

 

この監督大丈夫か?って勘繰っちゃうくらい美少女大好きな人が邪な目で見そうな怪しい作品でもあったね。最初から最後までヒロイン(ティンヤ)の可愛さを愛でる映画。

 

 

肝心のホラーの方はですが、前回レビュー書いた「来る」と同様動画配信に家族を巻き込む親のエゴがさく裂した話でした。幸せを見せびらかすとそんなことあるか?ってなってホラーになるんだね。なるほど。

 

 

ネタバレありのおおまかなあらすじ。自然豊かな森の中に立ち並ぶ閑静な住宅街。そこに住む家族の物語です。歪な親子の愛憎ともいう。母親が動画配信をしていて自慢の家族を動画にとって世界中に配信して「完璧で絵にかいたような幸せ」をアピールしてるんだけど、そのせいで子供が抑圧されちゃってる。妻の個性を尊重して浮気にも目をつぶる父親と、姉ばかりえこひいきされるたびに癇癪をおこす生意気な弟。そしてスケート選手だったけど怪我で引退してしまい、今は12歳の娘ティンヤが体操選手として大会で優勝することだけを望む美人な母親。そんな家族の中友人もいなく体操でも成果が出ず我慢を強いられる娘。

 

 

 

その娘がある日森の中で卵を拾います。その卵を持ち帰り親に内緒でベッドの中で孵化することにした娘。その卵は徐々に大きくなり、ある日ついに孵化します。中から現れたのはどこか人のようなカラスでした。いわゆる亜人ね。娘は家族に内緒で必死に世話をしますが、うなされるたびにカラスが娘の邪魔になる存在を消し去るというホラー展開。手に余る存在に苦悩しながらカラスにアッリと名付けたティンヤ。鳥の雛って親が咀嚼して吐き戻したものを食べるじゃない?その餌付けのシーン再現されてるからこっちがえづきそうになったわ。ヤバすぎでしょ。虫とかのキモいシーンはゴミ箱の中くらい。ちょっとキモかったから食事しながら見ない方がいいかも。ホラー作品あるあるですね。私は物食いながらホラー作品は見ない派です。

 

 

 

えっとなんだっけ、そうそう母親は不倫してるんだけど帰宅した娘がそれを目撃してしまいます。パパを愛してないの?と動揺する娘だけどまだ12歳だからなんとなく母親と秘密を共有して丸め込まれちゃう。パパを愛する娘としては父親が気づいてくれないかと目で訴えるんだけど、パパ容認してたか。きっとあれよ。ママは魅力的で生き生きして輝いて欲しいけど俺じゃ荷が重いからしかたないなって感じなのかな。調子に乗った母親は浮気相手の家にまで娘を連れて行っちゃうんだな。そしてお相手のテロも妻を亡くしたばかりの子持ちだった。まだ赤ちゃんで可能性を秘めた赤ん坊を愛でる母親の姿に胸をざわつかせる娘。母親にとって娘は自分自身の成功を体現できる存在みたいです。

 

 

 

12歳の少女にとってはうっかり孵化した卵からカラス人間出てくるし、そいつが悪さをするしママは不倫しててパパは知らんぷりってなかなか荷が重いよね。

 

 

しかもカラス人間はより愛されたかったからなのか徐々にティンヤに似てくるんよ。育てたものが失敗作、こんなはずじゃなかったのにっていうアッリを育てたティンヤの嘆きが、大会で優勝できるような思い通りの娘に育たなかったジレンマを抱える母親の琴線に触れちゃうのよ。腕の中で号泣する娘を抱きしめる母。そして最後は母娘が結託して家族の害にしかならないカラス人間を退治しようって流れになりますが父親同様凡人な弟は出る幕もない。ホラーにおける女は強しなのでついに母娘がアッリに立ち向かいます。

 

 

だけど排除する気まんまんの母親と異なり自分の半身でもあるようなアッリを手にかけることに躊躇のあったティンヤは思わず庇って身を挺してしまい・・・

 

 

騒ぎを聞きつけた父と弟がティンヤの部屋で見たものは、娘を手にかけてしまい打ちひしがれる母親と倒れた二人の娘たち。本物のティンヤが亡くなったことでティンヤそのものの姿を得ることができたアッリは「マ…マ」と母親に呼びかけます。

 

 

映画はそこで終わるけど、娘のシをなかったことにしてアッリを娘として扱うって展開になりそうね。乱入してきたカラスや隣家の犬をバラの下に埋めてしらんぷりしたみたいに、処分しちゃうんじゃない?素行が悪かったら外聞を恐れてアッリを病院に入れちゃって何事もなく暮らしそう。たぶんそう思えちゃうのが一番のホラーなんだと思いました。

 

 

 

そもそもの始まりは森でカラスの卵を拾ったから。その親カラスはティンヤが窓を開けたことで家の中に入ってしまい暴れて家具を壊してしまいました。完璧な世界や秩序を壊してしまったカラスを始末した母親は処分を娘に任せます。娘が家の中にいれたからこうなったのだから責任とりなさいってことらしい。カラスを可哀そうだと思いながら従った娘ですが、ゴミ箱からカラスが消えているのに気づき探しに出ます。やがて森の中で瀕死のカラスを発見したティンヤは長引かせてはかえって苦しいだろうからと手にかけてしまったんです。その後巣の中から卵を発見しました。

 

 

なんか日本の昔話にありそうじゃない?カラスが悪さをするのはカラスの意志なのか、ティンヤが心の奥底に秘めた願望を成しているのか。カラスが怪我するとティンヤも同じ部位が痛むため徐々に二人の境界があいまいになってゆきます。カラスに対する情なのか、カラスが亡くなったら自分もただではすまないという恐怖からなのかなんとか母親を止めたいと思うティンヤ。けれどそんな娘の葛藤に母が気づくことはありませんでした。

 

 

ラストでカラスを始末しようとする母親でしたが、もしカラスを倒した場合ティンヤが亡くなったのかはわかりません。ティンヤが亡くなってもカラスは生き残れたので。ティンヤが最期にカラスに託したのは母親を求める心だったのかもしれない。

 

 

母娘が傷つけたカラスの遺した卵。それはある意味恐ろしい呪いだったのかもしれませんね。