愛のマスカレードから分岐した作品でライザール×シリーンだけで~す。
浅い眠りから目を覚ますとそこは王の寝台だった。けれど薄暗い部屋は静まり返っていて情熱の名残さえなくて頬に当たる冷たいしとねの感触にふと寂しさが募ってしまう。
隣りを見るとやはりそこに王の姿はなかった。わかっていたことだった。婚姻して以降ライザール様とこの寝台を使ったことなど数える程度だった。夜毎どこで過ごされているかもわからない。詮索も許されなかった。
私は妻なのに彼にとってはやはり形だけのものでしかないのかもしれない。当時も今も大臣たちとの対立に明け暮れているライザール王は有力な大貴族との縁組で現状の打破を目論んだ。
一方、カマルの舞妖妃であり密偵でもあった私は店主様からの密命をおび王宮に潜入していた。目的は王を誘惑してその貴い血を手に入れること。そのために婚約者のレイラ様になりすましていた時にライザール様に出会い心を奪われてしまったのだ。
胸をざわつかせる琥珀色の瞳に魅入られてしまった私は彼をその気にさせたくて幾度なく際どい誘惑をした。男も知らないのに・・今思えば恥じ入ってしまうけれど当時の私は真剣だった。
店主様から素肌に施されたヘナタトゥーがあればライザール王ですら誘惑できるはずだったのに・・経験豊富なライザール王が惑わされることはけっしてなかった。
それがなんだか悔しかったがこんな男もいるのだということが私に新鮮な驚きをもたらした。もしあの時流されてしまったら私がライザール様を慕うことはなかっただろう。密偵としての成功はおさめただろうけど、そうならなくてよかったのだ。
刹那の快楽だけを与える女になりたかったわけではなかった。そんな女では彼の記憶にもきっと残れない。