ずっと心を押しこめて密偵として生きてきた私の中に初めて芽生えた欲望を捨てることはできなくて、思わず救いを求めるように彼へと手を伸ばした。

 

 

たとえ店主様を裏切ってしまうことになってもライザール様を諦めきれなかった。

 

 

そうして初めて自分の意志で選んだ方がライザール様だったのに・・・帰る場所も踊り子で得た名声もシリーンという名前も失ってしまった。

 

 

私の居場所はもうここしかない。暗ドクロが日常茶飯事の王宮の中で友もなく王妃という役割をただ演じることしかできないのだ。これが夢見た結果なのだと思えばむなしさだってこみ上げてしまうのに、想いを返してくださらないライザール様を責める気にはなれなかった。

 

 

きっと私には人としての大事ななにかが欠如しているのだろう。妖艶な女を演じてこれまで多くの男達を惑わして来た。彼らは無垢ではなかったし女を見下していたから良心の呵責はなかった。仕事をこなせばこなすほど男に対する嫌悪は増すばかりだったしそれが私なりの免罪符でもあったのだ。