「この話を貴女にお話しできてよかった。貴女にはけっして後悔のないように生きて欲しい。今誰を思い浮かべていますか?」

 

 

水煙草商人の思惑もわからなかったが、今私の脳裏に思い浮かんだのは・・・

 

 

ライザール様だわ

 

 

「私の心を占めるのはいつだって王だけです」

 

 

迷いがないわけではなかったから少しだけ嘘が入り混じっていたけれど、それは私の願望だった。ジェミルとの絆は途切れてしまったからせめて裏切りの代償で得たライザール様のことだけは失いたくなかったのだ。

 

 

純粋とは程遠いわね。恋をしたことで坂道を転がるように愚かな女になってしまったみたい。不安や葛藤が常にあった。でもそれが王を愛した代償ならば甘んじて受け入れるしかない。

 

 

私の答えに納得したのか、一つ頷くとハサンは言った。

 

 

「もうそろそろ王もお戻りでしょう。貴女もおやすみなさい」

 

 

どうやら王の夜の散策はこの方も承知してるようだ。けれど問い返す暇はなかった。促されるまま別れもそこそこに切り上げた私は王の寝室へと舞い戻った。