顔を強張らせた私の様子から察したのだろう、ハサン様はそっとため息をもらすと続けた。

 

 

「どうやら驚かせてしまったようですね。あのハーブティーの効果がこれほどとは思いませんでした。害のないものですからご安心ください、あれは飲んだものに真実の一端が覗ける夢を見せてくれるのだとか」

 

 

にわかには信じがたいがやはりあれは過去にこの場所であったことなのだろうか?

 

 

「ではやっぱり貴方が『本物』なのですね」

 

 

そう尋ねるとハサン様は静かに頷かれた。

 

 

――お認めになった!

 

 

「そうですよ、私は貴女同様全てを捨てたのです。貴女も見たでしょう?この国の有様を・・この国を牛耳る貴族たちとの争いは私を疲弊させるものだった。だから私は逃げたのです。『彼』は立派な王です、この国を愛し私欲に走らず正しく治めてくれた。私ではこうはならなかったでしょう。偉大な父ライオールが私に遺したこの国を私の代で終わらせることはできなかった。だから後悔はないのですよ」

 

――そうだったの

 

 

それはおそらく苦渋の決断だったのだろう。国の命運がかかっていたが、その選択が正しかったかどうかは後世にならないとわからないだろう。