店主様は私が壊れてしまわないように、身を守る方法を授けてくれた。心はじわじわと絶望して荒みながらも私の純潔は守られた。
記憶を取り戻せた分、店主様の仕打ちがいかに非道だったかあらためて実感してしまったが、なぜだろうか今目の前で微笑みかける店主様に恐れは感じなかった。
「記憶は取り戻せたようだね」
辛い記憶も蘇ってしまったが、それでも記憶を取り戻せたことはやはり嬉しかった。
「・・はい、店主様」
やはりこの方は・・・店主様ではないのだろうか?
けれどきっと尋ねてもはぐらかされるだろうから、あえて尋ねないでおいた。
「シリーン、よくお聞き。愛には試練が必要なんだ。君もそして彼にも・・だからぜひ乗り越えてほしい」
愛の試練・・乗り越えられるだろうか?
ライザール様に拒まれてしまったらと思えば、やはり怖かったが毅然と顔をあげて応じた。
「店主様がくださったチャンスは無駄にはできません」
すると店主様は「よくできました」と私の頭を撫でてくれた。
ああ・・やはりこの方は・・この方が誰であろうと私への愛情は確かに感じた。