「私は王になってしまった。王になったのは私欲のためではなかったが、お前を妻に娶ったのは私の願いからだ。だがお前が私の大切なシリーンであったとしても、私の正体を勘づかれることは恐ろしかった。再会をあれだけ望んでいたはずなのに・・・な」

 

 

わかっていたことだったが、ライザール様は今も葛藤されているのだ。私を生かしておくべきか否か・・・まさに愛の試練だわ

 

 

「できることなら私は貴方の妻として添い遂げたい。でも私の存在が貴方を苦しめてしまうならばどうか貴方の手で終わらせて」

 

 

覚悟を決めそう告げると、ライザール様は瞠目されたかと思うと強く私を抱きしめられた。これが最後の抱擁かもしれない・・・

 

 

互いの鼓動が重なりあい、感情がかき乱されてゆく。こんなにたくさんの感情が私の中に眠っていたなんて・・・愛は痛みを伴なうものでもあるのね。

 

 

しばし無言で抱き合った後、ライザール様と再び見つめ合う。互いの目じりは涙で濡れていた。ふと一抹の後悔がよぎる。

 

 

やはり美しい思い出のままでいた方がよかったのかもしれない・・無垢だったあの頃だって理不尽な世界があることを私は知っていた。

 

 

昔馴染みであってもそれで万事うまくいくわけではない。どれだけ足掻いてもわかりあえない想いだってある・・

 

 

仮面夫婦のままだったらこんなにも心を揺さぶられることもなかったでしょうね

 

 

だけど多くの欠落を抱えたままの私ではいずれ関係は破綻していただろう。だからこれは私にとっても最後のチャンスだった。私達の間にはまだ辛うじて絆があった。施政者として非情さをも併せ持つライザール様ではあったが、昔の誼に免じて寛容さも見せてくれた。