私自身フランマに呼び出しを受けた。
罰を受ける覚悟を決めた私にフランマはただ問うた。
「フィグ・・貴女の望みはなにか?」と
私の望み・・それは彼とレイブンと一緒に生きること・・それだけだった
デチューンされたとはいえ人より遥かに高位だった知的生命体の出した答えにフランマは理解を示した。
「フィグ・・今の貴女は人にしか見えませんよ?その形ゆえでしょうか?どうかその想いを大切にしてください」
そう言ったきりフランマは沈黙した。私が彼らにしたことを思えばおとがめなしに解放されるなんて思わなかった。
その後ファントムソサエティやヤタガラスの間で高度な政治的駆け引きがいくつかあったようだった。
世界を滅ぼそうとした魔女と裏切り者の処分はさぞ重かろうと思われたが、Aionの介入もありとりあえず不問に処された。
きっと私の望みが彼らからしたら取るに足りないくらいささやかなものだったからかもしれない。
レイブンが目を覚ますことを祈りながら、私はこまどりで子供たちとその帰りを待つことにした。この施設からヤタガラスは手を引き代わりにAionの所有になった。フランマのせめてもの親心らしい。
半年後・・・レイブンが目覚めて・・私達は再会を果たすことができた。
彼は私の残した手がかりを頼りに途方もない迷路を抜け出すことができたようだ。
そして今は一緒に暮らしている。
時々顔を出すリンゴには「押しかけ女房が板についてきた」ってからかわれてしまった。
もちろん結婚はしていない。いわゆる同棲状態だが多くを望む気は起きなかった。
人ではない私をレイブンは黙って受け入れてくれたから。
彼が初めて私に触れてくれた日のことを今でも覚えている。人の身体がこんなに温かなものだって・・・羞恥とともに知ってしまった。
私を抱いたレイブンは私の命を奪わずに済んだことを今更ながら安堵して涙を流した。
「私も罪を犯しました。けっして許されない罪です。だから一緒に背負ってゆきましょう?二人なら怖くないでしょう?」
貴方を失うよりずっといい・・もし少しでも何かが違っていたら共に未来を歩むことはできなかっただろう。
恋人を失いながらも懸命に生きるミレディに私はなれそうもない。この温もりがなければ生きていけないから・・
だからどうか私のために共に生きて!!それだけが私の心からの願いだった
恋人の鉄仮面をレイブンに奪われたミレディが一度だけ訪ねてきたことがあった。
「良いことよく聞きなさい。ポールの仇の貴方を見逃すのはこの一度きりよ。もちろん貴方のためじゃない。それがフィグの望みだからよ。今ここに、私の目の前にいる貴方はただのレイブン。いいわね!」
ミレディー貴女のくれたチャンスは無駄にしません。本当にありがとうございました。
悲しみを乗り越え毅然と去っていくミレディには頭が下がる思いだった。
多くの人達がチャンスをくれたから今の私達がある。
「人は失敗から学ぶんだぜ?いいかフィグ・・あんたの人生はまだ始まったばかりだろう?俺だってアッシュとやり直せたんだ・・レイブンとあんただってきっと大丈夫さ」
サイゾーの言葉は実感がこもっているようだ。
だから今はその言葉を信じよう。
「レイブンのこと頼む・・フィグ。頼めるのはあんたしかいない。傍にいたのに気づかなかったのは俺だってそうだ。そのせいでカブラギのことも失ってしまったが、レイブンはまだ生きてるだろ?・・・だからがんばれよ」
そう言ってアロウは元気づけてくれた。大切な者を失ってしまったからこそその言葉は私の心に刺さるものだった。
人のもつ不完全さ、絶対ではない未来予測・・それでもなお人生は続いていく。
知的生命体の私も今よりもっと限りなく人になれる日が来るのだろうか?
それを確かめるために愛するレイブンと共に歩んでいこう・・・
――私達が掴み取った未来に向けて・・
終わり