防犯グッズは持ってるし用心すればいい。
やっと訪れた店内には所狭しとばかりに古今東西の品が置かれてあった。
いわゆる骨董品というやつだ。美術的価値も高そうな家具やドロップみたいな輝きを放つ色とりどりの宝石、私でも知っているような名の知れた作家が描いた名画などが飾られていた。
店主を探しながら好奇心に駆られるまま店内を見て回っていたら、背後から声をかけられた。
驚いて振り向くと柔和な笑みをたたえた眼鏡の男性が佇んでいた。眼鏡の奥の緋色の瞳がやけに印象的だった。
「エルハザードへようこそいらっしゃいました」
物腰からも店主だろうか?会釈を返すと店主と思しき男性が微笑んだ。
「初めてのお客様ですね・・?なにをお探しですか?お客様にはこちらなんかいかがでしょう?」
商売熱心な店主に内心苦笑しつつも共に見て回る。
「別にこれと言った目的はないんだけど、そうね・・ここはどんなお店なの?」
値札はついてないが、全て一級品だろう。私のお給料じゃ買えないわね。
冷やかしでも大丈夫かしら・・?
何気なく尋ねた私に店主は謎めいた笑みを返した。
「そうですね・・日常から脱却して非日常をお求めのお客様に定評がありますね」
非日常・・?骨とう品店で・・?やっぱり怪しいお店なんじゃ・・
ますます謎が増えてしまった。
首を傾げる私に微笑んだ店主は続けた。
「外は寒かったでしょう?暖をお求めでも構いませんからどうぞごゆっくり・・今熱いコーヒーをお淹れしますから」
どうやら見すかされてしまったみたいだ。
すっかり店主のペースだったが、応じることにする。
少し人恋しい気分だった。
常連になってもビジネスライクな向かいのカフェよりずっといい。
店の奥に通され腰掛けた窓際のテーブルから覗くとまだ雪がチラついていた。