耳を澄ますとやはり誰かが泣いているようだ。
やがて私がシンクロした「主人公」が泣いているのだと気づく。
なにか悲しいことがあったのだろうか・・?
どうやら泣きつかれて眠ってしまった「主人公」が目を覚ましたようだ。
五感は制限されているが感情はやはり私は私のままであることに安堵する。
やがて視界が開けたかと思うと映画のセットのような光景が突如現れた。
ヨーロッパの宮殿の一室みたいだけど・・
「姫様・・もう泣かないでくださいませ・・これは王がお決めになったことですからしかたないことなのですわ。ヴィンス殿下のことはお忘れください」
侍女と思しき女が必死に宥めている。
どうやら隣国の王に輿入れが決まり、慕っていたヴィンス殿下に失恋してしまったようだ。
いきなり失恋から始まる物語なんてあんまりだわ・・
なるほど・・・先に出会って恋心を抱いていた男性を諦めて、隣国との和平の証として政略結婚を強いられてしまったらしい
「わかっているわ・・・シャナーサ国へは嫁ぎます。もう私にはそれしかないのだから・・だけど心まで縛ることなどできないでしょう。・・見て、これはヴィンス殿下が下さったものよ」
侍女にブレスレットの嵌った腕輪を示した。
その瞬間、私の脳裏にタグが追加された。
どうやらルーガン王国においては女性は発言を制限されているらしい。
ヴィンス殿下から贈られた腕輪があれば一定の発言を許可された証となるようだ。
ルーガン王国は男尊女卑のお国柄らしい。
ヴィンスってどんな男性なのかしら?傲慢な男かもしれないわ。
ロサンヨーク生まれとしては遠慮したい相手かもしれない。
しかし考えてみれば皆が憧れるファンタジーの世界は中世ヨーロッパが舞台なことも多いから階級制度があることもあるだろう。
許されないからこそいっそう燃え上がるって感じかしら。
けれど主人公・・いえ「私」はすでに嫁ぐ覚悟はあるようだった。
それにしても一向に隣国の王の話がでないわね。
失恋したばかりで別の男を気にかけることは難しいか。
でも政略結婚とはいえ夫になる男性のことを知らないなんて、私は気になってしかたない。
当人が他人事なんてさすがにまずいでしょ。