権力もお金もある男性だもの・・ね
断然興味はつきなかったが、ここでひとまず主導権を「私」に返す頃合いかもしれない。
こんな序盤でシンクロ率を上げ過ぎたらこの先大変だし引き際だった。
すでに婚約者がいるというヴィンス殿下に失恋して、隣国との和平のために王妃として嫁ぐことになったなんて・・
とはいえヴィンス殿下もやはり政略結婚のようだけど。
この手の話では恋愛結婚はまずありえない。おとぎ話のようにはいかないらしい。
でも幸い私はマリーアントワネットみたいな無邪気な子供ではないし、男性を知らないわけでもなかった。
そういえば・・「私」はその辺りどうなのかしら・・?
とはいえ王との婚姻を控えているなら身体検査だって通ったはずだからそういうことだろう。
やだ・・・なんだかドキドキしてきたわ。
冬景色にうんざりしながらカフェでコーヒーを飲んでいたのが嘘みたい。
あれよあれよという間に婚姻の支度が整い、「私」が嫁ぐ日がやってきた。
見送りする人々の中にヴィンス殿下の姿があった。
手に赤いバラを持っている方がそうだと思う。
遠目だったけれどなかなかの美男だった。
見送りに来るなんて・・両想いだったのだろうか・・?
これから隣国を目指す段階になっても「私」が吹っ切れた様子はなかった。
最初が肝心だからこんな様子じゃきちんと役目を果たせるか心配だわ。
なぜなら「和平」のための婚姻だからだ。
隣国とはいえ随分遠い。針葉樹の森が絶えやがて景色はすっかりと砂漠へと切り替わった。
砂漠なんていつぶりかしら・・?ロサンヨークの郊外にも砂の台地が広がった場所はあった。大学生の時は夏季休暇を利用して通っていた時もあった。
野性のピューマもいるのよ。
肌が日焼けしないようにお手入れをしてくれる侍女達はみなこちらを密かに窺っている気配があった。まるで腫れ物にさわるような扱いだわ。
姫はどちらかというと内向的で大人しい人柄のようだ。まさに深窓の姫君って感じね。
王の愛人に刺客を向けるくらいだからもっと気性の激しいタイプだと思っていたけど・・意外だわ
ただ・・もしかすると子供の存在が彼女を変えたのかもしれない。
母は強しっていうもの。王の愛人に子が出来たら我が子が脅かされると考えたのかもしれない。
私は独身だけどその手のドラマはさんざん見てきたから権力に群がる人々の考えそうなことはなんとなくだが理解できた。