「お気に召したようでなによりだ。だが・・もう少し召し上がった方がいい。幸いシャナーサには美味いものがたくさんある。そなたの名に相応しく・・・な」

 

ん?それはどういう意味かしら?女性の体形について言及するなんてセクハラじゃないのって思わないでもないけど・・私の名前の由来は「満たされる」だものね。

 

用意された衣装は姫には少し緩かったからしかたないわ。

圧倒的に脂肪や筋肉が足りてない体形だもの。華奢というより貧相って思われたのかも。裕福な方だから外聞を考えてのことなんでしょうね。

 

『ええ・・・そうします。ここだけの話ですけど・・コルセットしていたらお腹いっぱい食べれないんですよ。シャナーサはバザールも賑わってますし、ここに来る途中でも葡萄をいただいたけどとても美味しかったですわ』

 

あえて忠告を深刻にせずにそう切り返すと一瞬だけライザール様が驚いた気配がした。

 

馴れ馴れしすぎた?

 

しかし私の心配とは裏腹に王は「そうされると良い」と機嫌よく言っただけだった。

 

どうやら曖昧な態度よりメリハリのある態度でいた方が好印象のようだ。

 

つまり・・無感動な姫とは相性良くないかもしれないわ。

 

晴天の下、オアシスのような緑が生い茂った中庭を散策しながら聞かれるまま言葉を交わしてライザール様の人となりを窺う。

 

反射的に会話の応酬をせずに、慎重に吟味したうえで返すため腹づもりがまったく読めない用心深い方だということがわかった。

 

なんというか・・・近寄りがたいワンマン経営者って感じの方だわ。

恋愛ものだと定番な感じだけど・・実際には雲の上の人だし恋愛対象にすることなんてやっぱりあり得ないじゃない?

 

でもそうね・・・私は嫌いじゃないかな

なんとなくかつて保護区で出会ったピューマを思い出してしまう。

珍しい黒い体毛の子だったわ・・あの子会いたさに通うのが楽しみだった。

 

怪我が治ったとたんどこかに行ってしまったけど元気でいるかしら・・?

 

野性で孤高で近寄りがたい、まさにあんな感じ。

つい構いたくなっちゃうのよねえ・・・ドキドキ

 

私はライザール様に関心あるけど、ライザール様の方はどうだかわからない。

 

政略的結婚だから縁故目当てで力を入れてるのは伝わってくるけど・・

 

情をかわせる余地があるのかどうか気になるわ

 

中庭とはいえ外なのでせっかくお風呂に入ったのにまた汗ばんできてしまったようだ。

 

「喉が渇かれただろう・・茶でもいかがかな?」

 

目敏い方だけあるわね。女性の扱いは心得てるみたいだし、

缶ジュースですませないあたりが素敵だわ。

 

もちろん好きな相手がくれるものなら缶ジュース1本でも嬉しいけど。

 

大事なのは気遣いができるかどうかだもの。