私らしく振舞えば振舞うほどきっと本来の姫とはかけ離れていく。

それに比例するようにシンクロ率も上がるようだった。

 

その時ライザール様がこちらに向き直った。

 

「先ほどは助かった、礼を言う。それがそなたの本心だと良いが・・さあ・・ここは寒いから戻ろう」

 

口添えをして正解だったけどやはり勘繰られてしまったみたいだ。

 

もしさっきのが私の本心だったら貴方は私を信じてくださる?

ライザール様

 

あの時は人道的にも権限のあるライザール様の良心に訴えるべきだと思った。

 

だけど私自身は何一つ成していない。ただ威を借りただけでしかなかった。

 

それでも王妃となる身分ならば執成すことだってできるはずだからできることをしただけ。

 

なによりも貴方の味方でいたかった。

 

昼間同様手を繋いだまま広間に戻った後間もなく宴はお開きになった。

 

今夜はこれでおしまいのようだ。

明後日いよいよ初夜を迎えるが、それまでは寝所も別々だ。

待ち遠しいのか自分でもわからない。

 

「それでは姫、私はこれで。今宵はよく休まれるといい・・・おやすみ」

 

部屋まで送り届けられた後、ライザール様は帰って行った。

その背中を見送りながら一抹の寂しさを感じてしまう。

 

会いたい時に会えるわけじゃない。

夫になる相手であっても干渉は許されないからだ。

 

今夜は一人寝をされるのかもわからない以上、彼の誠意を信じることしかできなかった。

 

スマホもない世界にようこそって今更ながら実感してしまう。

さすがに今夜は疲れたしそろそろ姫に主導権を返そうか・・・?

 

→返す

 

シンクロ率は上がってしまったが、最初が肝心だからしかたない。

姫に主導権を戻した途端疲労が消え、またもや画面が切り替わるように姫の行動を見守る状態になった。

 

私自身が行動してる間はリアルそのものだけど、この状態になったらやっぱりゲームだって感覚が戻るようだ。思考はできるし視覚や聴覚はあるけど触覚や嗅覚や味覚はなくなりまさにテレビを見てる感覚に近い。