夜着にはすでに着替えているしもう遅いから後は寝るだけなんだけど・・・

 

侍女もすでに下がってしまい、寝所には姫の姿しかなかった。

 

しばし呆然としていたが、やがてのろのろと寝台から降りた姫は裸足のままドレッサーに近づくと引き出しの中から取り出した宝石箱を手に取った。

 

引き出しに収まるくらいだからそんなに大きなものではない。

 

どうやらカラクリ箱のようだ。ほら、パズルのようになっていて正しく組み合わせると開く仕掛け箱よ。

 

なるほど・・そんな仕掛けになってるのね。

他人の秘密を垣間見るのは気が引けたが、ゲームだと情報収集でレポートを入手するのはおなじみの光景だ。

 

箱の中身は宝石ではなくブローチより少し大きめの細密画と手紙の束のようだ。

 

姫の視点を通してしか見えないのがもどかしいが、細密画の方は肖像画だった。

 

遠目にしか見たことはなかったが恐らくヴィンス殿下の肖像画らしい。

 

そうなると手紙はラブレターだろう。それといつか侍女に見せていた「発言を許された者」だけが持てるブレスレットだった。

 

「ヴィンス様・・・」

 

しばしの間細密画を見つめた後、手紙を手に取り読み返す姿はとても結婚を控えている女性のものではなく、恋煩い中の乙女のようだった。

 

幸い言語の壁はないから文章も読めるのは助かる。

 

手紙はやはりヴィンス殿下からのものらしく、紋章入りの手紙だったが内容は恋人同士でかわすような他愛のないものだった。

 

まるで詩集みたいな愛の言葉が美しい書体で綴られていたが姫は健気にも繰り返し読み想いを募らせているのだろう。

 

ロマンティックだわ。

 

結末を知らなければ幸せのお裾分けを満喫できたでしょうけど・・・

 

やがて最後の手紙になったが、その手紙はまだ封緘されたままだった。

 

姫は開封すべきかどうか悩んでる様子だったが、結局開封することなく細密画と他の手紙の束と一緒に宝石箱にしまうと箱を閉じてしまった。

 

?なんだか気になるわね・・あの手紙いったい何が書いてあるのかしら?

 

封蝋されていたが、手紙にあった紋章だった。

 

ヴィンス殿下からの手紙にあったのと同じ紋章のようだし、彼からの密書なのかもしれない。

 

主導権を切り替えたら覗けるが、封蝋されているから姫にも密書を見たことがわかってしまうだろう。

 

いえ、そうじゃないのかも・・・

 

これまでも主導権を握り行動したが姫はその空白期間を疑問に思う様子はなかったから恐らく私が開封した場合姫が読んだことになってしまうのだと思う。