「シリーン・・」

 

その時背後から名を呼ばれた。

 

ドクドクドク・・・待って、この声って・・

声の主には覚えがあった。

 

思いきって声の方を振り向くと、少し離れた列柱の影から身を乗り出した店主が手招きしているのが見えた。

 

『店主さん?』

 

店主は緋色の目を三日月のようにゆがめて笑みを浮かべていた。

 

やはり店主もこのゲームに参加していたのだろうか?

 

こっちこっちと手招きする店主の元にかけよると、店主がニコリと微笑んだ。

 

「やあ会えてよかったよ、シリーン」

 

たとえ胡散臭くても知り合いのいない場所で顔見知りに会えたことに安堵してしまう。

 

『驚いたわ、店主さんもこっちに来てたなんて』

 

なぜ突然姿を現したのだろうかと勘繰っていると、店主が言った。

 

「ゲームを楽しむためのボーナスをあげようと思ってね。きっと役に立つだろう」

 

店主の言うボーナスとは「スキル」追加についてだった。

密偵や踊り子などルートにあったスキルを一つを選べるらしい。

 

今の「王妃ルート」で選べるのはどうやら「密偵」だけのようだ。

 

「密偵ってつまりスパイってことでしょ?なにができるの?」

 

つい前のめりになってしまう。だってスパイよ?すごいじゃない!

ホリウッド映画のスパイ映画を思い浮かべながら問う私に、店主は密偵スキルについて説明してくれた。

 

なるほど・・イメージ的には忍者に近いのね。

潜入はもちろん、軽いアクションまでこなせるようだ。

 

私の密偵スキルはレベル1らしい。先ほどしたスパイのまね事の分が経験値として加算されたようだ。

 

「わかってもらえたかな・・じゃあシリーン、ほらサイコロを振ってごらん」

 

 

サイコロ・・ああ、この青い石のサイコロのこと?

 

チャームの一つのサイコロを思い浮かべながら手を開くとそこにはいつの間にか青い石のサイコロが握られていた。