周囲を窺うとやがてライザール様の痕跡を発見した。
どうやら密偵スキルが作用したらしい。夜目が効くのは便利ね。
鱗粉のように発光する痕跡は中庭をつっきり塀を越えて王宮の外へと続いているようだ。
それにしても考えてみれば不思議だわ、王がコソコソ宮殿を抜け出すなんて、町に向かったみたいだけどこんな時間にどこへ・・?
首を傾げながら追ううちにやがて見覚えのある後ろ姿が前方に見えた。
――いた、ライザール様だわ
一瞬わからなかったが、痕跡が指示していたから辛うじて判別できた。
それにしても随分雰囲気違うじゃない?まるで盗賊みたいだわ
白いローブ姿から黒装束姿に代わっていたが間違いなくライザール王のようだ。
髪型も一まとめにしており、ジレから剥き出しの二の腕はまさに筋骨隆々といった有様だった。
緋色のスカーフで人相を隠している姿は完全に盗賊そのものだった。
今にも開けゴマって言いそうだわ。
お忍び姿で夜の街をうろつくなんて・・どこに向かってるの・・?
しかし順調に見えたのも束の間、突然横道にそれたかと思うと見失ってしまうことが度々起きた。
もしかして・・尾行に気づいてる・・?
最初は気のせいかもとも思ったが、やはり気づかれていたようだ。
角を曲がったはずなのに路地の向こうは人っ子一人いなかった。
―――消えた??
どうやら見失ってしまったようだ。もう少し探したかったが、零時を告げる鐘が聞こえてきた。
時間切れみたいね。
ガイドラインから外れるのはまずいかもしれないわ、戻りましょう。土地勘がない以上しかたない。
ライザール様が宮殿を抜け出してどこに向かったのかは結局わからなかったが、密偵スキルのレベルが上がればもう少しうまく尾行ができただろうか?
そうかもしれない・・そうだわ!
早々に戻ってみたが、ライザール様はまだのようだった。部屋には店主の姿もすでになかった。
ライザール様は用事が済むまでは戻らないはず、ならこのお部屋を少し調べるチャンス到来だった。