私の気配を察知したのか黒い獣がこちらへと向き直った。

 

その姿を見た瞬間、やはり確信する。

 

『お前・・あの時の子でしょ?・・私よ、シリーン覚えてない?』

 

ロサンヨークで会ったのは随分前のことだったのに、つい昨日のことのように鮮明に思い出してしまった。

 

現実世界で出会った黒いピューマと再会するなんて思いがけなかったが、私だって今ここにいるのだからあり得ない話ではないのだ。

 

黒い獣はしばらくの間、警戒した様子でこちらを窺っていたが、やがて警戒を解くとこちらへとゆっくりと近づいてきたかと思うと体をこすり寄せてきた。

 

カルゥ・・・・・

 

ああ、この鳴き声懐かしいわ。でも不思議だけど怪我を負った右前足に傷跡は見当たらなかった。

 

『よしよし、覚えてくれていたのね、元気だった?』

 

野性の子だからあえて名前はつけなかったが、よく見ると黒い獣の首には黄金の首輪がはまっていた。

 

まさかペットなの?この首輪のセンスってもしかして・・・ライザール様?

 

この王宮でこんな立派な黄金の首輪をはめたまま放し飼いにされてる以上、ライザール王の愛玩動物である可能性は高かった。

 

『もしかしてお前、ライザール様のペットなの?』

 

そう尋ねると黒い獣はカルゥと鳴いた。相変わらず表情豊かで可愛い子だわ。

 

人懐っこい子だからつい大きな猫のように感じてしまうけど、爪も牙もある立派な獣だ。

 

ありがとう・・私のこと忘れないでいてくれたのね・・

 

それにしてもまさかこの世界で再会できるなんて・・

なんか運命感じちゃうわドキドキ

 

だってそうでしょ?私がまだロサンヨークで学生だった頃の出来事だもの。

 

あんな頃からこの子と縁があったなんて・・・

 

この子の寛いだ様子からもやはりこの中庭はテリトリーのようだ。

もしかすると婚約者を驚かせないように、ライザール様がどこかに留め置いたのかもしれない。

 

そりゃあそうでしょうね。私だって知らずに会ったなら悲鳴をあげたかもしれない。

 

黒い毛並みを撫でると黒い獣は気持ちよさそうに鳴いた。

 

その時軽い足音が近づいてくる気配がして、振り向くとそこにはライザール王が立っていた。