昨夜垣間見た光景を思い出す。
披露宴で賑わう宮廷の外ではまだ幼い子供たちが飢えているのがこの国の実情だった。
そして私の立場も踏まえてなされた忠告だった。両国の和平のための犠牲、そういう見方もできるからだ。
ゲームの世界でステキな男性とのロマンティックな恋愛に憧れて身を投じただけの自分が恥ずかしかった。
だけど、だからこそこの世界で確かな絆を欲してしまう。
それはこの世界に留まるか否かを決定づけるほどの拠り所になるだろうから。
『昨夜のトイことですね。きっとあの子だけじゃないのでしょうね、
そう思えば心が痛みます。なんとかならないのでしょうか』
王の政策を非難する気はなかったが、その手からこぼれてしまう人々がいるのは確かだった。
すぐ隣に控えた侍女が血相を変えていたが、この際だから思いきって尋ねてみたらライザール様はしばしこちらの真意を問うように見据えた。
やがて嘆息すると続けた。
「どうにかしたいのは私もだが、できる限りの支援はしている。完璧とはほど遠いがな」
支援されているのね・・それでも十分ではないってことかしら。
昨夜の貴族連中の反応を見ても王の味方は少なそうだった。
『宰相のアラム様に力添えしてもらえないのですか?』
ふと思いつきで尋ねてみたが、ライザール様は微かに眉をしかめた。
「確かにあの男は愛国者だがあてにはできん。奴にとって大事なのはあくまでもこの国だけだからな」
???いったいどういうことかしら??
「そうだな・・アラム?」
首を傾げていたらいつの間にか傍にアラム様が佇んでいて驚く。
まったく気配を感じなかったわ・・いったいいつ来たのかしら?