食堂から連れだって出た後、足を止めたライザール様が言った。
「良ければ午後からバザールにでも行かないか・・?」
それはデートのお誘い?
かどうかはわからなかったけれど、了承するとライザール様は去って行った。
控えていた侍女は喜色を浮かべていたが、あんまり期待しすぎない方がいいかしら?
午後になり、約束の時間に中庭に行くと、王はすでに来ていた。
お待たせしてしまったみたい。
デートなのか視察なのかわからなかったけれど、貴婦人として無難な服装を選んでもらった。
ライザール様の方もラフな格好だったけどクーフィーヤ姿も素敵だわ。
さすがに威厳は隠せないわね。
私の格好を見たライザール様は満足げに頷くと言った。
「姫は馬に乗れるか?」
見れば二頭の馬が待機していた。
乗馬の経験はあるけど・・どう返事をしようかしら?
→できないと伝える
ここはやっぱり相乗りでしょ。
するとライザール様はあっさりと頷かれると、私を前に乗せて手綱を繰ると掛け声と共に馬が走り出した。
背後から抱きしめられてるような心地に戸惑いながらも徐々に緊張がほぐれていく。
考えてみれば昨夜からずっと「私のまま」だったことに改めて実感していた。
きっとシンクロ率も随分上がってしまったでしょうね・・
それでも少しでも一緒にいたいと思ってしまう。
人通りの激しい往来で馬を降りた私達は、香辛料の匂いや熱気でむせ返る賑わうバザールのただ中にいた。
活気のある風景に圧倒されてしまいながら、はぐれない様に手を繋いだまま歩き出す。
ゲームの中とは思えない臨場感だった。
この人たちが本当に全員NPCだなんて・・
道の両側の屋台には宝石や香辛料が所狭しとばかりに並んでおり、呼びかける商人の声や値切る客の声が行き交っていた。