生活必需品が売られているみたいだけどさすがに目抜き通りだけに違法な店はないようだ。道にゴミも落ちていないあたりさすが王都だけあるわ。

 

ライザール様のお話しでは以前は雑多で混沌としていたそうだけど勅令により改善されたようだ。

 

ライザール様は慣れた素振りでいくつかの店で見繕った食料を手渡してきた。

 

「食べるがいい、キョフテだ・・美味いぞ」

 

そういえば、お昼がまだだったわね。遠慮なくいただきます。メーンはラム肉のハンバーグ、飲み物はアイラーン、塩味のヨーグルトドリンクで、デザートはデーツの入った甘いお菓子だった。

 

食べ歩きしながらバザールを見て回ったが、デートと言うより視察を兼ねているらしかった。

 

とはいえライザール様は身分を明かさないままだったし、商人たちも殊更畏まった様子はなかったが、顔なじみであるのか皆一様に気安い様子で声をかけてくるようだ。

 

いつも一人の彼が女連れだったから好奇の視線が投げかけられたけど、私のことは妻だと紹介したら納得してくれた。まああながち外れでもないけど・・

 

思わず胸が高鳴ってしまったわ。

 

むしろやっと身を固めたのかって喜ぶ彼らを見ていたら微笑ましい気持ちになってしまった。

 

彼らの様子からもライザール様は定期的にバザールをお忍びで視察されてるのは間違いなさそうだ。

 

散々歩き回った後、休憩がてら屋台で買ったトントールで喉を潤すことができた。

 

冷たくて美味しいアイスを食べる私をライザール様も満足そうに見ている。

 

う・・・なんか視線を感じたら恥ずかしいわね。きっと子供みたいだって思われてるんだわ。

 

なんだかすっかり餌付けされることに慣れてしまった気がする。

でも考えてみればカルゥも懐いていたし、忍耐強くて面倒見の良い方なんだと思う。

 

忙しい方だけに仕事も兼ねてるのはわかってるけど、適度に構ってもらえてやはり嬉しさも募ってしまう。

 

『ライザール様のおかげでバザールを満喫できました。連れて来てくださってありがとう』

 

礼を言うと「それは良かった」とライザール様も頷いた。