踊り終わった後、侍女と大使がご機嫌で出迎えてくれた一幕もあったわね。

 

「さすが踊りの名手だけはございますなあ。このフリード感服いたしました。王も、お父上もさぞかしご安心されることでしょう」

 

ですって。ルーガンの男性にしては社交的で話しやすい方だ。

 

それにしても姫って踊りはやっぱり得意だったのね。

姫の父上はルーガン王の弟君だそうだけど、王には娘がおらず嫡男のヴィンス殿下だけだったから親族間の姫の中から数人の候補が絞られたらしい。

 

14歳から16歳の娘の中から誰にすべきか幾度も話し合いがもたれたそうだ。

 

確かに王族の婚姻って若い時分に親が決めてしまう許嫁制度のイメージあるわね。

 

それに恐らく領土拡大のために婚姻は有効な手段だったのだろう。

 

大使が幾度もシャナーサに赴きライザール王の意向を汲むことになったそうだが、

 

年若い姫との婚姻をライザール様が難色を示されたため話し合いは難航したそうだ。それはそうでしょうね。

 

王の名代として話をまとめたのは宰相のアラム様だった。

アラム様は当時16歳だった「姫」を選び2年待ってから婚姻することを提案し、ルーガン王がそれを承認したことで婚約が成立したため、ライザール様もやむを得ずに合意したそうだ。

 

若い子が好きだから選んだわけじゃなかったのね。

だけど急遽白羽の矢が立った姫にしたら青天の霹靂だったのかもしれない。

 

14歳の妹が選ばれると思って安心していたのならまさか自分が選ばれるなんて思ってもみなかったでしょうから。

 

婚姻の適齢期が早いとされる世界では大変だったんでしょうね。

 

とはいえ姫が御年18だなんて私ったら随分さばをよんでしまったみたいだわあせる

 

大学を卒業して社会人3年目くらいだから・・年はご想像におまかせします。

 

こちらがしゃべらなくても会話が成立してしまうなんて、今回ばかりはルーガン流に助けられたかもしれないわね。

 

外交官ならではの裏話を聞き出すことができたのも密偵スキルのおかげだけど。

 

大使に調子を合わせて神妙な顔で相槌うってただけですんで良かった。

 

そうえいえばヴィンス殿下のことを尋ねるチャンスかもしれない。

聞いてみようかな?

 

→情報収集も兼ねて尋ねてみる

 

そうね、気は進まないけど大事なことだし尋ねておきましょうか

すぐ隣にライザール様もいらっしゃるから誤解を招かないようにしないと。

 

『それはそうと・・フリード様、ヴィンス殿下はお元気かしら?婚約なさったのでしょう?』

 

ヴィンス殿下の名を出した瞬間、ライザール様が微かに息を飲む気配がしたが、表情に出ないのはさすがだった。

 

「殿下はご健勝でございますよ。先日も婚約者のパメラ王女とその弟君のロランさ様とご一緒に・・・・」

 

え・・?ロランって今言ったの?

ロランさんというのはクライデルのパメラ王女の弟らしい。

 

じゃあヴィンス殿下が意味深な手紙を送った相手は婚約者の弟だったってことなのね。

 

う~ん、義弟になるなら別に手紙を送っててもおかしくないけど・・

 

そういえばあの手紙はかすかに菫の香水の匂いがしたわ・・

ささやかな気配りだけど大切な相手だからこそだと感じた。

 

中身を見たわけじゃないから確証があるわけじゃないんだけど、

女の勘かしら。