すると隣で話を聞いていたライザール様が話に入ってきた。

 

「ヴィンス殿下のことは私も聞いている。まだ若いが勇猛な方だとか。次世代会議で会うのが楽しみだ」

 

――!

 

昨夜ライザール様の書斎で見つけた資料を思いだした。

これは・・あえて私の反応を見るために話題を出しているのかしら・・?

 

なんだかそんな気がするわ・・・

 

「殿下にもお伝えいたします、遊学のためにロラン様も同行されると国元から申し使っておりますので、その時はぜひライザール王も良しなに」

 

え?そうなの?これはまた面倒なことになるかもしれないわあせる

 

「あの・・ライザール様、次世代会議はいつ行われるのですか?」

 

心の準備をしたくてそう尋ねたら、ライザール様はどこかこちらを試すように1週間後だと言った。

 

1週間なんてあっという間じゃない。

姫が慕っているヴィンス殿下がお気に入りのロランさんを同行してシャナーサに来るなんて・・姫はどう思うかしら?

 

初夜は明日だし、もうその頃には姫は名実ともに人妻だけど、だからといって恋心が消えるとは限らないでしょう?

 

これはまだ姫の物語なのよ?

婚姻の直後に想い人が来る事態は想定していなかったし、遠くにいる相手に想いを募らせるのとはわけが違うわ。

 

姫が思い余って軽はずみな行動する可能性だってあった。

 

冷めきった「仮面夫婦」になった末、不貞の罪で処刑されてしまうシナリオに従うべきなのか、運命に抗って私の物語にしてしまうのかの選択を迫られているようだ。

 

ああ・・一体どうしたらいいのかしら

 

「そなたのことは我妻として次世代会議で紹介するつもりだ。楽しみだな」

 

なんだか牽制されているのか期待されているのかわからないわね。両方かしら。

 

姫のことはともかく、私の覚悟を問われているのだとしたら・・

 

今夜王として友好の証で踊ったように、明日の初夜もきっと王として振舞われるのだろう。