王妃の立場を選んだのはより安定を求めたからだ。

結婚願望だってあるわ。なら断わる理由なんてないわね。

 

おとぎ話のように出会った瞬間恋して結婚してめでたしめでたしってわけにはいかないけれど、そもそも大人同士だからベッドでの相性だって大事だ。

 

なら私の答えは決まったわね。

 

→私もそうしたいです

 

「良い返事だ・・・約束だぞ、シリーン」

 

――!

 

初めて名前で呼んでくれたわ・・ドキドキ

これまでずっとライザール様は「姫」と呼んでいたのに・・

 

やはり彼の中で明確な線引きがあるのかもしれない

月光の降り注ぐ庭で見つめ合った私達は初めてのキスをかわす。

 

なんだかとってもロマンティックだった

 

ドキドキ

 

やだ・・思い返すと顔が上気してしまうわね。

 

姫が寝てしまった後、さっそく今日の出来事を秘密ノートに記しておく。

 

ロラン様のことや1週間後に行われる「次世代指導者会議」のことももちろん書いたけれど、メーンはやっぱりライザール様のことだ。

 

王宮で出会った時デジャヴを感じたのは、あの出会いが初めてじゃなかったからだった。

 

シャナーサに向かう途中の砂漠で私達は出会っていた。

はずなんだけど・・本当にそうかしら?

 

なんだかもっとずっと前に会っていた気がするのよね

あんな印象に残る方と出会っていたら絶対忘れないと思うんだけど・・

 

まさか、この世界に来る前元の世界で出会っていた可能性がある?

 

元居た場所は人口の多い大都市だったし、セレブだってたくさんいるまさに最先端の都市だった。

 

よそ者の私はセレブと縁はなかったわね。

 

だからたとえどれだけ個性が強い人であっても道ですれ違ったくらいでは印象に残らない可能性はあった。

 

あの街はそういう街だったわ・・雑踏の中に埋もれてしまえば見つけることは容易くない。

 

そんな場所で私は3年ほど暮らしていたけれど・・その前は故郷のロサンヨークで大学卒業までいたのだ。