―――そんな!!
『ではその大蛇はどこに?・・・』
その話が全て真実ならば大蛇が実在することになってしまう。
こちらへと迫るような暗闇の中に取り残されてしまったような恐怖を感じながら周囲を窺う。
すると暗闇の先で煌々と輝く緋色の双眸が見えた。
――え?
「出てくるがいい・・・アラム、私達の話を聞いていたのだろう?」
ライザール様の呼びかけに応じるように、闇の中から姿を現したのは宰相姿の店主だった。
――やっぱり同じだったのね
『店主さん・・・が大蛇なの?』
ライザール様の言葉を信じるならば、彼が非道を働いた大蛇であり私をこの世界に導いた店主だということだ。
「ええ・・そうですよ、シリーン。この姿はさる王子から授かったものです。お気に召していただけると良いのですが」
毒気のない顔で変わりない態度がむしろ恐ろしかったが、当人の話も聞くべきかもしれない。
『どうしてそんなひどいことを・・?』
店主さんのことをよく知ってるわけではなかったが、顔見知り程度であってもそんな非道を行っていたことはやはりショックだった。
「ひどい・・・ですか?けれどあくまでも私は王の求めに応じただけですよ・・彼らは私に願ったのです・・代償と引き換えに。それははたして私が悪なのでしょうか?」
――願い?・・
その言葉を聞いた瞬間、アラム様が私に願いを叶えて欲しいか尋ねた時のことを思い出してゾッとする。
我ながら危険な橋を渡っていたようね。
あの時事情を知らない私をアラム様が唆すのを見たライザール様が気色ばんでいたのも頷ける。