別れ際に店主さんが言った。

 

「安心してください、シリーン。私にはもう生贄は必要ないものです。私が欲するのは『愛の魔法』だけですよ。貴女ならばきっと私の期待に応えてくださるでしょう?」

 

――愛の魔法ですって?それはまた随分とロマンティックね

 

理屈は良く分からなかったけれど、蛇の姿ではなくなった店主さんにも変化が訪れたようだ。

 

ライザール様だけでは成せないことだから、だから私はこの世界に招かれたのかもしれない。

 

「ねえ・・貴方のこともっと教えて・・?」

 

打ち明け話には良いタイミングでしょ?

 

頷いたライザール様は私の手を引いたまま自室へと戻った後、

これまでのことを語ってくれた。

 

彼は元の世界では有名な富豪一族だったそうだ。私でも知ってるくらいのスーパーセレブだわ。

 

ただし婚外子であったため、決して裕福とはいえなかったそうだ。

 

彼は教師をしていた母を尊敬していたのだとか。

 

優秀だったため10代で大学を卒業した後、少しでも母に楽をさせるために起業して成功者になった。

 

セレブの仲間入りをした彼にはたくさんの出会いがあったけれど、心を通わせる女性とは出会えなかったそうよ。

 

貧しかった時は誰も見向きもしなかったことが彼を冷静にした。

嘲笑が笑顔に早変わりする様を見て人の心程移ろいやすいものはないと達観していたらしい。

 

けれど一方で温かい家庭を築くことに対する願望もあったため、密かに婚活サイトに登録したりもしたけど、出会いには恵まれなかったんですって。

 

なるほど結婚願望はあったのね。

そんな折、ちょうどお母さまの誕生日が近かったこともありふらりと立ち寄ったのがあの骨董品店だったのだ。

 

そこでゲームに誘われたのかと思いきやそうではなく、不吉な予言をされたらしい。

 

リアリストの彼はもちろん信じなかったけど、最悪な形で予言は的中してしまった。