私は身一つでこの世界に召喚されたけれど、元の世界に帰る選択肢もあったからその差は大きい。

 

「お母様はどうなったの・・?」

 

私は両親ともすでに他界したが、思い出もあるしお別れはできたから。

 

「母はあれからすぐに亡くなったそうだ。心残りがなかったわけじゃなかった。だが元より父はいないも同然の存在だったからな」

 

――そうだったの。

 

「残念だわ・・とても。ライザール様のお母さまに私も会ってみたかったわ」

 

するとライザール様は苦笑された。

 

「いや、会っているぞ」

 

――ええ!?

 

一体どういうことかと思っていたらライザール様が種明かしをされた。

 

「アラムのヤツ、あろうことか私の母を元に女官長を作ったそうだ。おかげでいまだに頭が上がらないな。・・もちろん性格は少々違うが少なくとも雰囲気はそっくりだぞ」

 

なるほど・・そうだったのね。お姑さんだって思えばあの迫力は納得だわ。

 

私のこと認めてくださるといいけどあせる

 

「この世界はかつて滅びた王国をアラムが再構築したものだ。だがこの世界の生きとし生けるものはすべて本物だと私は思う。だからそなたもそう思って欲しい」

 

――ライザール様!

 

最初こそゲームだって先入観があった。

でも・・・

 

この世界に来た時に感じた照りつける太陽の眩しさ、風の匂い・・新鮮な葡萄の味・・・

 

決して夢ではないリアルな感動を私にもたらしたことを思い出す