それから朝が来て私とライザール様の結婚の儀が厳かな雰囲気の中行われた。

 

列席者はこの国の重鎮の方々ばかりで、私もライザール様の親族もいなかったけど・・

 

父親役は神官も兼ねている宰相様が買って出てくださったのよね。

 

不思議な方だわ・・油断してはならないと思うのに、心のどこかで信じたいと思ってしまう。

 

だけどこの国を想う気持ちは誰よりも強い方だ。

 

父親代わりをしてくれた宰相様に感謝の意を示した後、夫となるライザール様へと視線を転じると改めて胸が高鳴ってしまった。

 

ライザール様が差し出した手を求めるように手を差し伸べた。

 

婚儀だから私は白いドレスとプルメリアの花をあしらったベール姿、ライザール様も髪を結い濃紺のローブ姿だ。

 

証人として立ち会う臣下達が私達を見守っている。

王冠やティアラはないけど、婚儀が成立すれば私は王妃となる。

 

そうでなくても自分の結婚式なんて緊張するものでしょう?

しかも恋愛じゃなくて政略結婚だもの。いえ、政略結婚だけど素敵な出会いに恵まれたというべきかしら。

 

これまでだって友人の結婚式に招待されたことはあったけど

さすがにこんな事態は想定外だったわ

 

まさか異世界で王様と結婚するなんてね

恋愛の末に望んだ結婚じゃないから、正直実感はまだわかないし

見極めるための時間が十分だったとは言えないけど・・

あの夏を共に過ごした方ですもの・・

それに今の私ならばきっと・・

 

ライザール様、貴方を愛せると思うわ。

運命の恋になるかは自分次第でしょう?

 

選択肢が多かったわけじゃないけれど、私はこの選択を選んだことを後悔しない。

 

これが「私の物語」の始まりだ。

そう、婚儀はゴールじゃなくてスタートだって言うのは本当よ?

ライザール様は私を受け入れてくださったけど、政略結婚である以上私の立場は微妙だし、悲劇的な結末だってないとは言い切れない。

 

なによりも臣下に認められたわけじゃない。

彼らにとって私は王の伴侶でしかないのだ。

 

薄氷の上に立った心地とでもいうべきかしら?

それなのに安心感だってあるのは・・きっと

 

ふと脳裏をよぎったのは昨夜見た光景だった。

闇の中私の手を引きながらランタンを掲げて先頭をゆくライザール様の姿だ。

 

仄かな光に照らし出されたその横顔

 

ランタンのつけた光跡を横目に見ながら、はぐれないように彼が繋いでくれた手の温もりを思い出す。

 

それはまさにメタファーだ。

 

ライザール様は私にとって闇を照らしてくれる一条の光なのだと

 

そう感じるのだ。