相棒と一線を越えてしまったことに後悔がないといったら嘘になるだろう。
如月先生なら「真面目過ぎる」って笑うかもしれない。
今もって私にとって刹那君は恋人というより相棒の方がしっくりくる存在だった。
だからこの想いが恋愛感情ではないこともわかっていた。
眠る刹那君を起こさないように寝台を降りた私は、ドレッサーを覗き込んだ。
安普請のホテルとは大違いな重厚な作りで、鏡もピカピカに磨きあげられている。
当然だけど「私」がそこには写っていた。
歪んだり違う表情をすることもない、いつもと変わりない光景に安堵する自分がいた。
改めて27年間ほぼ毎日のように見てきた私の顔を見つめる
ドッペルゲンガーとの邂逅を経た今、以前の私となにか変わっただろうか・・?
→―――いいえ、私は私だ
あの影はずっと私の側にいたが、「恐怖」から目をそらし続けていた私にはその存在が見えなかっただけ。
関本への想い、刹那君への想いも・・・一歩踏み出すことができなかった。
刑事としての倫理観だけじゃない・・殺伐とした事件が立て続けに起きてしまう環境にいたからだ。
「ドッペルゲンガー」は刑事を続けるために不都合な真実から逃げたかった私の弱さが見せた幻だったのかもしれない。
だけど思いきって踏み出してよかったと思う。
穏やかな顔で眠る刹那君へと目線をやると自然と笑みが浮かんだ。
いつも一人寝ばかりだし・・
たまにはこんな朝もいいかもしれない・・心からそう思えた。