復讐は望まないのかと尋ねた私に彼女は否と言った。

「誰も恨んでいない・・私のせいで友を苦しめてしまった・・」とね・・

 

アリージュは亡くなったが私はジェミルを守護することにした。

それがせめてもの彼女への手向けだった。

 

ダーラもライザの血を分けた息子を奪うことはできなかったようだ。

 

ダーラの裏切りをライザが気づいたかって?さあ・・どうかな

慕う気持ちを知りながら決して応えない、それが答えではないかな。

 

そして愛する女を奪った者をこれからも決して許すことはないだろう・・

 

ダーラはアリージュを仕留めたが、からくもジェミルは難を逃れることができた。

 

密かにこの私が助力したことを彼は知らないがね。

 

その後王の刺客をかわしながら一時は貴族に匿われていたが、やがて母のドクロが彼らのせいだとジェミルは気づき、報復を果たした。

 

そして13歳になる頃「店主」とやらと出会い彼はアサシンになった。

私はずっと彼の影に身を潜めて見守っていた。

 

あれだけの特徴を持ちながら「店主」に正体を見破られなかったのは私の暗示のおかげだ。「店主」は多くの矛盾を抱えていただろう。

 

ジェミルはシリーンを守るという名目でアサシンになったが、王の血を持つ彼が自らの手で多くの命を私に捧げたのだということに恐らく我が主は気づいていないだろう。

 

初めて姿を現した時、ジェミルは王ではなかったが構わなかった。

私と取引をする権利を有する者へ機会を与えただけだが、ライザはけっして私のことをジェミルにもライザールにも伝えなかった。

 

人知を超えた力を恐れ、その力に翻弄されて友が変貌することを恐れたのだろう・・

 

父親のように・・・血を流す覚悟がなかった。

 

力を行使せず、人の力で王国を建て直そうと尽力するにはライザはあまりにも未熟であり、あまりにも寿命が短すぎた。

理想だけでは国は立ち行かない。