そんな矢先のことだった。臣下と争っていた偽王が妥協のために婚姻することになり、婚姻した相手もまた偽物だったなんて・・
偽物のあの男にはお似合いだと思ったし、どうせ破談になると高を括っていた。用心深くて冷酷なあの男が密偵の女なんか選ぶはずがないと思っていたのに・・
どこの誰とも知れぬ女だったのに豪胆なあの男は婚姻してしまった。
一目見た瞬間から気にくわない女だった。見目麗しくそつがない・・そして男を誘惑する魔性を秘めた女・・あの女と同じだわ
賢明なあの方があの女に誘惑されてしまったように、あの男も愚かしいほどあっさりとあの女の誘惑に堕ちてしまった。
女を封印してずっと努力して実力でのし上がってきた私が若さと美しさだけが取り柄のあんな女のしもべになるなんて!
どうせあの女も王に泣きつくんだわ。
媚びてへつらい男を手玉にとろうとするはず・・
咎があったとしても構うものですか!あんな偽物私は恐れたりしない
性悪な女に騙されてしまう男に対する苛立ちが募っても、私があの方を憎めるはずもない。
だから代わりにあの女に代償を払ってもらっただけ・・
私は悪くない・・・悪いのはあの女よ!!
過去と現在が交錯してゆき混乱する・・
ああ・・酔ってしまったわ。うまく考えがまとまらない・・
なによりも腹立たしいのは、彼女が密偵であることを放棄したからだった。
隠し持っていた暗器をとりあげたのは私だったけどそれだけで三流だと決めつけることはできなかった。
開き直ったあの女は堂々とあの男との駆け引きを制してまんまと王妃におさまったのだから。