あれがあれば私でもあの方を誘惑できたのかもしれない・・

でも使うには遅すぎたわ・・・

 

一番美しかった時だってあの方は振り向いてくれなかった!

それにヘナタトゥーを使った女達の末路を私は知っていた。

だからこそアイーシャは稀な耐性を持つ王妃を珍重していたらしい。

 

アイーシャにとって王妃の価値はただそれだけ。

 

ライザールが偽物だと気づかれるわけにもいかず近づこうとする女達を全て処理してきたから、王妃の不興をかってしまうことになった。

 

王妃自身婚姻前はその目的で近づいてきたのは間違いなかった。

 

あの男は不問に処してしまったから表ざたにはならなかったけれど・・

 

その王妃すら親友面したアイーシャの本心は知らなかったなんて皮肉ね

 

私は女の友情なんて信じない。

 

敵は傍に置けというのを実践しただけ。友情をはぐくむふりで牽制していたけれど・・

 

あの女は私からあの方を奪ってしまった!!

アイーシャだって同じこと。心を許して信じた王妃が愚かなだけ・・

 

そういえば・・王妃の本名はシリーンというらしい

 

その名には覚えがあった。

あの男がライザ様に話してるのを聞いた。

 

まさに灯台下暗しというやつね。

長年探し求めた女を妻に娶りながらあの男は知らないなんて・・

なんて滑稽なんだろう・・だからこの秘密は墓場まで持っていくわ

 

絶対教えてなんてあげない

 

せいぜい蜃気楼を追い求めてさ迷えばいい

愛なんてしょせん幻想なのだから・・

 

もし王妃があの男が偽物と知ったらどうなるのかしら・・?

そしてもしあの男が王妃に正体を見破られたらどうするかしら・・?

 

切り札はまだこちらにあるわ・・・ふふふ

 

寝台で一人昏い喜びにひたるダーラを外回廊から見ていた影が一つ。

 

やがて影の主は気配もなくそっと立ち去っていくのだった。