父王は権勢を誇ってはいたが、国内はけっして豊かではなかった。

 

当時はまだ特産品であるテロメアーナも発見されていなかったからな。

 

それでもハレムにはたくさんの女達が集められ贅沢三昧だったようだ。

 

だからといって王子や王女が次々と誕生したという話も聞かないままだったから王がよほどの女好きだったのかと思っていたが・・

 

後になりライザから聞いた話を加味するとやはり何者かの思惑があったのかもしれない。

 

理由は定かではないが、ハレムでは美女たちの失踪が相次いでいたらしい。

 

当時私はまだ市井にいたから王宮での出来事など知る由もなかった。

 

さもありなんだ・・後宮では時折そういう不穏なことが起こりえる。

なんといっても国中の美女がいるのだからな。

非合法な取引があっても驚きはしないさ。

後宮の風紀を取り締まる王妃の不在は大きかった。

 

ライザは不穏な気配は感じていてもどうすることもできなかったそうだ。

 

・・・無理もない。

 

何故なら少年だったライザは恋をしていたからだ。

相手は父王のハレムにいた下級貴族の姫だったそうだ。

蛇を愛でる少々風変りな姫だったという。

 

「今でこそ平気だがあの頃はまだ私も若かったから恥じらいもあってね、ベールの下のこの素顔を見られることに躊躇いがあったのだよ。けれど彼女は私に微笑みかけてくれた。そして差し出したその手の甲にはやはり同じような鱗があったのだ。触れると固かったがこれは持って生まれたものだから気にしたことはないと彼女は言った。その屈託のない笑顔に救われた心地がした。あの瞬間、私は彼女に恋をしたのだろう。その様子を遠巻きに見ていたハレムの女達がこぞって彼女の真似をしたが、父上はさぞ驚かれたことだろう」

 

ある夜、酒を酌み交わしながらライザと語り合った時にそんな話を打ち明けられた。