店主の命じた唾棄すべき行為の数々をシリーンは恩返しだと信じ切っていた。
あんな無垢な彼女に店主は恩人面して幾度も男を誘惑させていたのに・・
もし俺にもっと力があれば店主からシリーンを救えたのに・・・
何もできない無力感に苛まれながら今のままが最善だと信じて突き進んできた結果の失敗だった。
自分のバカさ加減に腹がたってしかたないが全てが手遅れだった。
王の執拗な追跡は続き半ば自暴自棄になっていた時、旧ハレム跡地に逃げ込んだ俺は彼と出会った。
突然現れたそいつは「父」だと名乗りをあげた。
もちろん信じなかったが、ベールをとったそいつの顔には俺と同じ特徴があった。
それだけではなく、あのライザールからも匿ってくれたんだ。
陰に身を潜めて聞き耳を立てる俺の耳に二人の会話が漏れ聞こえてきた。
驚いたことにライザールは終始「父」に敬意をもって接していた。
一国の王が一介の水煙草商人にだ・・それが異様な光景であることは無学な俺でもわかったさ。
短いやりとりではあったが、ライザールは父に免じて追及は諦めたようだった。
コイツ本当に何者なんだ・・?
ライザールが去った後、改めて尋ねた俺はさらに呆然とすることになった。
目の前のこの優男が俺の父親だってだけでも驚きなのに、この国の王だったなんて・・・
なら俺は・・?
俺の中でいくつかのピースがものすごい勢いで組み合わさり真実が見えた気がしたんだ。