店主は長い事王の血を求めていた。だからこの国の王であるライザールの婚約を利用してシリーンを替え玉として王宮に送りこんだ。

 

だが想定外の事態が起き、シリーンがライザールと・・・

だがそのライザールは偽物だった。

 

本物は今目の前にいて、そして俺も店主の求める条件に合致する。

 

つまり俺にとっても無関係な話ではなくなっていたんだ。

 

確かに母を失ったことで父を恨んだこともあったが、実際に会った父はとても穏やかで悪意も気概もない無害な男だった。

 

この国のために王位をライザールに譲渡した経緯も父は語った。

そしてライザールは辛酸をなめながらも、9年もの歳月を身を粉にして懸命にその信頼に報いてきたらしい。

それが本当だったならやはり店主が嘘を言ったのだろう。

 

あいつならやりかねない。

俺がアサシンだと知り父はいささか動揺したが、俺の無事を喜ぶと同時に偉大な王を失わずに済んだことを喜んでいた。

 

俺の母の死を知った時は悲しみ幾度も俺に謝ってくれたが、

人を憎んだり恨んだりしない人だった。

 

長年鬱積していた怒りの矛先を失ってしまったが、俺の生存を涙を流して喜んでくれた父をこれ以上憎めそうもなかった。

 

全てを失ったと思ったが俺にはまだ父が残されていた。

会えるとも思っていなかったが、母の愛した男だから信じたかった。