あれが父・・か。

 

俺とは違い父はとても高潔な男らしい。

母と俺を守れなかったのは未熟さからだが、今更責める気にはなれなかった。

 

ただ愛しただけだ・・その気持ちは俺にも痛いほどわかった。

勢力争いに巻き込まれ邪心のある家臣の裏切りにあい、母を失い俺も行方不明になってしまったが、ずっと諦めずに探し続けたのだという。

 

父は俺を探し出せなかったが、そのおかげで俺も店主に正体を悟られずにすんだ。

 

もし知られれば俺はとっくに奴の実験体になっていただろう。

俺とシリーンはずっと奴の玩具だった。その運命を幾度なく呪いながらもシリーンと出会えたことは俺の喜びだった。

 

だからこそ守らねばならない。

俺も父もそしてなにより大事なシリーンを。

 

ちっ・・・どうすればいい?どうすれば俺はアイツを守れるんだ?

 

幾度自問自答しても応えは浮かばない。

おそらくチャンスは一度きりだった。

得体のしれない店主は卑怯な手を使いほとぼりがさめるまで隠れるだろうし、奴の協力者の存在もやっかいだった。

 

そもそもうさんくさい活動をするための潤沢な資金がカマルの経営だけでどうにかなるとも思えない。

 

店主がシリーンを使って王族の男の血を求める理由を俺は知らなかったがどうせろくな理由じゃないし知る必要も感じなかった。

 

問題はどうやって二度とシリーンに手を出させないようにするかだ・・

 

父に店主のことはとても言えなかったし、今まで正体が見破られてない以上すぐに正体が露見するとは思えなかったが、油断はできなかった。