思わず見とれていたらシリーンが不思議そうに言った。
「でも不思議だわ・・それでジェミルを助けられるなんて・・どういうことかしら・・?」
そうだった。シリーンは店主が偽物だと気づいてないんだった。
どうやって誤魔化すか考えながらシリーンに尋ねてみた。
「店主のヤツあんたになんて言ったんだ?」
するとシリーンはなにか吹っ切れたような表情で言った。
「もう私は密偵でも踊り子でもないから二度と店主様の元に戻らないようにって・・・ここでお別れだよって・・お前はレイラになることを選んだのだから相手がたとえライザール様であっても本名を明かしてはならないよ・・っておっしゃったわ。自分の覚悟を試された気がしたし突き放された気がしてショックだった。でも店主様はこうもおっしゃったわ・・血は受け取った、恩返しはすんだのだからもう十分だって・・だから愛する人のところにお戻りって・・やっぱり店主様は私のことを考えてくださっていたのね・・そしてジェミル・・貴方のことも。だから・・事情は良くわからないけれど私がそうすることで貴方が助かるならば構わないわって応えたのよ」
夢だからなのか、シリーンは「店主」との問答に疑問をさしはさむことなくその本質を理解したらしい。
俺には命を要求したのにシリーンに対しては随分甘い気もしたが、シリーンの気持ちを思えば俺には詫びることしかできそうにない。
店主に命じられるまま心を押し殺して密偵と踊り子を使い分けてきたシリーンだったが、これから一生好きな男にすら身分を偽り続けなければならないんだ。
そしてライザールも同じだった。王に成りすますなんて神経が図太い男だ。
だが血筋や身分だけが重んじられるシャナーサで正体が露見すればただですむはずがない。それでも奴はこれからも王であり続けるんだろう・・父や・・俺の代わりに・・・
だが俺は適材適所だと思うぜ。