待っているとやがてすりガラスの玄関引き戸に小さなシルエットが佇んだ。

 

小さな影はしばらく無言だったがやがて小さな可愛らしい声で応答があった。

 

「どちらさまですか~?」

 

つたないしゃべり方ではあったが、母親を真似たのだろうか?

 

腕時計を見るとすでに21時近かった。初対面の人を訪ねる時間帯ではなかったが安否確認がとりあえずできたことに安堵する。

 

これから親の訃報を伝えなければならないのはとても気が重かったがこれも大事な役割だった。

 

とりあえずこの男の子が武田家の長男の太郎君かどうか確認するのが先だった。

 

「こんな遅くにごめんなさい。お姉さん刑事、あ正義の味方のおまわりさんなんだけど開けてもらえる?」

 

小さな子からしたら知らない人であることに変わりはなかったが、わずかな躊躇の後ドアの引き戸が開いた。

 

そこには5歳くらいの男の子が佇みこちらを窺っていた。

パジャマ姿なので応答が遅れたのは寝ていたからだろうか?

 

「お姉ちゃんおまわりさんなの?」

 

どこか不安そうな面持の男の子を怯えさせないように注意を払いながら目線を合わせるように身をかがめて話しかける。

 

「そうよ・・私はG県警の北条紗希で彼は愛染刹那。・・君のお名前は?」

 

あえて聞いてみるとおずおずとした様子で男の子は「太郎」と言った。

 

ではやはりこの子が武田太郎君のようだ。