「そうね・・私も同感よ。でもまずは刹那君が気づいたことを教えてくれない?」
促すと刹那君は口を開いた。
「さっき坊主に読んでやった絵本だが、いわゆるベストセラーってやつだった。俺も子供の頃に爺や・・・じゃなくて爺ちゃんに読んでもらった覚えがある」
刹那君は微妙に言い回しを訂正したがそこはあえて気にせずに彼の指摘した内容に集中する。刹那君が気になったのは絵本が新品同様なのに製造されたのが30年以上も前だったことだったようだ。
親世代が子供の頃に読んだ絵本を子供にも読み聞かせることはままあるだろう。
当時の絵本を大切にとっておき子供にプレゼントすることもあるのかもしれない。
おそらく絵本だけだったらばなんとなく辻褄をあわせて納得できてしまう程度のことだった。
だがいくつかの証拠が全て同じ事実を指し示すとすれば別だ。
→この家ではどうやら時が止まっているらしい
そう考えればしっくりとくる。
先ほど見たトミさんの遺影に記された没年もやはり30年以上前の日付だった。
では次に太郎君について考えてみよう。
あの子の正体がなんなのか刹那君はどう思っているのだろうか?
すると刹那君は「座敷童かもな」と言った。
ここが迷い家なら座敷童が出ても不思議はなかったが果たしてどうなのだろうか?
この家は生活感がそこかしこに見て取れた。
つまりこの家も太郎君も含めて実在したかもしれない家の在りし日の姿なのかもしれない。