家を出る前に念のために先ほど刹那君が寝かしつけた太郎君の様子を見にいったが布団はもぬけの殻だった。
トイレじゃないかという刹那君を他所に私は閉まったままの押し入れを見つめた。
かくれんぼをしたいと願った太郎君は誰かに見つけて欲しかったのかもしれない。
開けようとしたがつっかえ棒でもあるかのようにピクリとも押し入れは開かなかった。
その場に正座してそっと手を合わせると察したのか刹那君も隣りに胡坐をかき手を合わせる気配がした。
――太郎君、どうか成仏してください
次の瞬間頬に風を感じて目を開けたら、そこは外だった。
霧は晴れ先ほどまでいた家屋の影も形もなく、代わりに眼前にあったのは鎮座していた地蔵だった。
地蔵を見た瞬間、トミさんの笑顔を思い出した。
アルカイックスマイル・・まさにそのものだったのだ。
そもそも地蔵とは子供を供養するための神様だった。
見ると丁寧に掃除が行き届いており、お供えものもあった。
コンビニのおにぎりやインスタントの味噌汁、ペットボトルのお茶や袋入りのスナックというのが今どきらしい。
おそらく亡くなった太郎君を偲び事件を知る近隣の者が供えたのだろう。
武田家の台所でいただいたおにぎりの味を思い出して合点がいった。
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あの時刹那君がしきりに首を傾げていたのも無理はない。
グルメな刹那君はコンビニ飯を食べたことがないのかもしれない。
ただ義理堅いから残さずに食べていたようだ。
私はコンビニ飯ばかり食べてるから一口食べた瞬間わかったけど。
真実を求めて訪れた私と刹那君をトミさんの姿を借りた地蔵がもてなしてくれたのかもしれない。お供え物を食べたことはバツが悪かったが地蔵からの心づくしのお裾分けだと思えば幾分か気が紛れた。
だからか顔を見合わせた刹那君もやはり狐につままれたような顔だったが、再度感謝を込めて手を合わせたのだった。