生前の太郎君は祖母のトミさんに懐いていたそうだ。あの仏間はトミさんが寝起きしていた部屋だったからこそ、太郎君はあの場所がお気に入りだったのだろう。
おばあちゃんの存在を感じていたのかもしれない。その健気な想いに地蔵も応えたのではないだろうか。
私とはかくれんぼを、刹那君には絵本の読み聞かせをして欲しいとねだった。私達を通しご両親と大切な時間を過ごしていたのかもしれない。
太郎君の笑顔を思い出すと温かい想いがこみ上げてくるのは私達にご両親の霊が憑依していたからだけではないと思う。
とはいえ心霊現象に巻き込まれた為、霊験あらたかな神社の巫女である如月先生からは刹那君と共にお祓いに来るよう厳命されてしまった。
恨みのあるものじゃないから安心してと如月先生は太鼓判を押してくれたけれど。
真相が判明して、さ迷っていた親子が再会できた以上迷い家が今後二度と現れないのか、それともやはりまだ山中を彷徨っているのかはわからない。
あの後、山中で夜明かしをするわけにもいかず、置いてきた車まで戻ったが崖崩れなどなかったかのように周囲は静まり返っていた。
そのまま刹那君の運転で帰路についた車中でのことだ。
両親のいない刹那君はひどく太郎君に同情したらしい。
強く生きて欲しいと願いながらもすでに太郎君がこの世の者ではないことも感じた刹那君は「座敷童」だったら良かったと思ったのだそうだ。
そんな優しい心を持つ刹那君だからこそあの場所に導かれたのかもしれない。
かくいう私も魂が千切れるような体験をかつてしたことがあった。
あの陰惨なブラインドマンの作業場に私はなにか大切なものを置き去ってきたのではないか?と思ってしまうことがある。
以前見た動画がフェイク動画だったのか本物の心霊動画だったのかはわからない。
けれど・・・もしあれが本物だったのだとしたら・・
私の魂の一部はいまだにこの現世のどこかを彷徨っているのかもしれない。
――私を探して!
太郎君はご両親と再会できた。
ならば私もいつか失った分身と出会う日が来るのだろうか?
思わずゾクリと背中を這いあがるような寒気を感じてしまい、咄嗟に手を交差させて両肩抱いた私を見た刹那君がヒーターを入れてくれた。