【愛染刹那】

 

俺が葉子さんと知り合ったのはとあるパーティだった。

地元の有力者が主催したパーティで俺も愛染家の当主として参加した。

 

もちろん格式ばったパーティなんてこりごりだったが、じいやからぜひにと言われてしかたなくのことだった。

 

当時彼女の旦那である佐久善一は健在だったから、地元の名士としてかなり目立つ存在だった。

 

若輩とはいえ愛染家の当主の立場だったから挨拶をかわすことができた。

 

旦那の腕にそっと手を添えた可憐な葉子さんを一目見た瞬間なんともいえない心地がしたことを覚えている。

 

善一は60過ぎだったが葉子さんはまだ20代だったから嫌でも人目をひく夫婦だった。

 

口さがない連中は上手くやったと言うが、たおやかな彼女が計算高い女だとは思えなかった。

 

そんなことを紗希に言おうものなら呆れられるだろうがな・・

 

人を信じて何が悪い・・・もしそれで裏切られたとしても俺に人を見る目がないだけだ。

 

ライアーズアート・・・それが紗希の特技だ。

 

被疑者をとことん疑い揺さぶりをかけ、相手の自白を引き出す紗希は甘ちゃんな俺を傷つけまいとする過保護な相棒だった。